icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科72巻3号

2018年03月発行

文献概要

特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[1] 原著

水晶体囊拡張リングを使用した水晶体再建術後に亜脱臼した眼内レンズの縫着整復手術

著者: 京本敏行1 榑沼大平1 星山健1 金児由美1

所属機関: 1長野赤十字病院眼科

ページ範囲:P.347 - P.350

文献購入ページに移動
要約 目的:水晶体囊拡張リング(CTR)は,チン小帯脆弱・断裂症例に使用するが,術後の長期的安全性はいまだ確立されていない。今回,CTR使用水晶体再建術後1年で眼内レンズ(IOL)亜脱臼を起こした症例に対して,IOLを摘出せずにCTRごと縫着整復し,術後4か月の経過観察ができた症例を報告する。

症例と経過:62歳,男性。長野赤十字病院眼科で左眼チン小帯断裂所見が約1/3周認められたため,CTRを使用し,水晶体再建術(IOL挿入含む)を無事に施行。その1年後に,5時方向に左IOL亜脱臼を認めたため,翌月,10-0ポリプロピレン糸を10時と2時に通糸し,CTRごとIOLを毛様体溝に縫着固定した。術翌日から視力が改善し,術後4か月間,左眼視力1.2を維持できている。

結論:CTRの適応は,約1/3周以下のチン小帯断裂症例とされ,縫着用CTRの適応は,約1/3周を越え約半周以内のチン小帯断裂症例となっている。また,縫着用CTR使用には,10件以上のCTR使用経験が必要である。つまり,CTR使用開始後10症例までに約1/3周のチン小帯断裂所見を認めた場合,CTRを選択することになる。そのため,CTRを使用しても,術後にIOL脱臼する可能性があり,IOL摘出を余儀なくされる。今回のようにIOLを摘出せずにCTRごと縫着整復し,IOL水晶体囊内固定と同様の視機能が維持できるならば,有用な術式と考えられる。ただし,術後の長期経過は確認できておらず,慎重な経過観察が必要である。

参考文献

1)鬼怒川雄一・徳田芳浩:水晶体囊拡張リング挿入水晶体囊の硝子体腔落下.あたらしい眼科19:1167-1168,2002
2)稲村幹夫:CTRの適応とQ & A.眼科グラフィック4:6-11,2015
3)水晶体囊拡張リング使用ガイドライン(2014年3月版).日眼会誌118:461,2014
4)Yamane S, Sato S, Maruyama-Inoue M, et al:Flanged intrascleral intraocular lens fixation with double-needle technique. Ophthalmology 124:1136-1142, 2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?