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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科72巻3号

2018年03月発行

文献概要

特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[1] 原著

虹彩腫瘤の角膜後面接触による水疱性角膜症に対し角膜内皮移植術が有効であった1例

著者: 大谷洋揮1 土至田宏1 柏木広哉2 松崎有修1 小森翼1 朝岡聖子1 市川浩平1 林雄介1 桑名亮輔1 太田俊彦1

所属機関: 1順天堂大学医学部附属静岡病院眼科 2静岡県立静岡がんセンター眼科

ページ範囲:P.359 - P.362

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要約 緒言:虹彩腫瘤が角膜後面に接触し水疱性角膜症を呈したと思われる症例に対し,角膜内皮移植術(DSAEK)が有効であったので報告する。

症例:79歳,女性。検診で視力低下を指摘され,当科を初診。初診時,左眼の虹彩耳側に孤立性の隆起性腫瘤およびその近傍の虹彩裂孔と両眼の白内障を認め,矯正視力は両眼とも0.7であった。角膜内皮細胞密度は右2,564個/mm2,左517個/mm2であった。既往歴としては右腎細胞癌が指摘され,4か月後に右腎摘出術が施行されたが,眼および全身への転移は否定された。その後,白内障および水疱性角膜症が進行したため,後日DSAEKを施行することを前提に左白内障手術を施行。その際,虹彩腫瘤切除術を併施した。病理組織学的検査では腫瘍細胞は認めず,細胞成分が不明瞭な色素顆粒の集積を認め,虹彩囊腫と考えられた。水疱性角膜症の進行に伴い,矯正視力が0.05に低下したためDSAEKを施行。DSAEKの術後1か月目には矯正視力が0.6に達し,12か月目においても0.6を維持していた。DSAEK術後12か月目の角膜内皮細胞密度は1,441個/mm2で,角膜内皮細胞減少率は42%であった。

結論:虹彩腫瘤の原因は不明であったが,幼少時の眼科通院歴から眼外傷の既往の可能性が推定された。虹彩腫瘤は角膜後面接触により水疱性角膜症を発症することがあるが,腫瘤摘出後のDSAEKは有効と思われた。

参考文献

1)児玉達夫:虹彩囊腫.眼科プラクティス24.見た目が大事!眼腫瘍.162-163,文光堂,東京,2008
2)松野 令・三木弘彦・福地 悟:外傷性虹彩嚢腫の2例.臨眼28:1043-1047,1974
3)元木竜一・武田憲夫・八代成子・他:レーザー治療前後で屈折変化を示した外傷性虹彩囊腫の1例.臨眼56:823-825,2002
4)猪俣武範・済陽里佳・藤巻拓郎・他:虹彩全幅切除を併用した先天虹彩囊胞の一例.眼臨紀3:390-393,2010
5)村田晶子・高砂 縁・真鍋耕一郎・他:外傷性虹彩実質囊腫の1例.三豊総合病院雑誌36:49-53,2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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