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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科72巻3号

2018年03月発行

特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[1]

原著

眼球突出で来院した経眼窩的穿通性頭部外傷の1例

著者: 近藤太郎1 中村靖2

所属機関: 1晴生会さっぽろ南病院眼科 2原田眼科医院

ページ範囲:P.407 - P.411

文献概要

要約 目的:眼球突出を主訴に来院した,経眼窩的穿通性頭部外傷の比較的稀な症例の報告。

症例:33歳,男性。仕事中,左眼の外側から異物が入り眼球突出になったと受傷1時間後に来院した。意識清明,神経学的異常なし。視力は右(1.0×−3.5D),左指数弁(0.01×−3.5D),眼圧は右15mmHg,左45mmHg,眼球運動は全方向に制限,右眼と比べ7mmの眼球突出を認めた。CTで左前頭葉に出血と眼窩骨膜下出血を認めた。受傷2時間後,意識障害と右片麻痺が生じ,CT再検査で脳出血の拡大がみられため,脳外科的頭蓋内血腫除去,異物除去+眼窩内出血除去術を施行。術翌日より眼窩内炎症による眼球突出が著明となり,兎眼となる。消炎・視神経保護を目的にステロイドパルス療法を行い,角膜保護のため眼軟膏を点入し,ラップにて露出角膜を被覆した。角膜障害は重症化したが,ステロイドパルス療法3クール目に眼球突出が減少し,閉瞼可能となり角膜障害も改善した。ステロイドパルス療法終了後11か月の視力は(1.2)と改善し,眼球運動障害もなく,眼球突出も左右差が消失した。

結論:経眼窩的穿通性頭部外傷は,無症状であれば脳損傷は見過ごされる可能性がある。一方で,その診断および治療が遅れなければ比較的予後は良好である。今回の症例では,初診時は眼科的に重篤な状態であったが,治療により後遺症もなく経過良好であった。これは,眼窩内炎症による重篤な眼球突出に対して,早期のステロイドパルス療法による保存的治療が有効であると考えられた。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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