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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科72巻4号

2018年04月発行

文献概要

臨床報告

結膜滲出液を含む涙液を用いたアデノウイルス検出増感キットの評価

著者: 上野智弘1 川村朋子1 佐伯有祐1 七田祐子1 右田博敬2 藤本嗣人3 内尾英一1

所属機関: 1福岡大学医学部眼科 2みぎた眼科 3国立感染症研究所

ページ範囲:P.481 - P.486

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要約 目的:アデノウイルス(AdV)結膜炎の診断にはイムノクロマト(IC)法キットが広く使用されているが,結膜擦過を必要とする。今回,結膜擦過を行わずに採取可能な結膜滲出液を含む涙液(以下,涙液)を用いるAdV IC法キットを従来法と比較検討した。

対象および方法:2016年7〜11月に福岡大学病院眼科およびみぎた眼科を受診したAdV結膜炎が疑われる93眼に2種類の迅速診断キットで検査を行った。対照キットとして結膜ぬぐい液を用いた従来のIC法キットを用いた。評価キットは,ろ紙を結膜に付着させて採取した涙液を検体とし,銀増幅IC法による専用の自動測定機器で測定された。AdV DNAの検出はreal-time PCR法で行い,遺伝子配列により型別判定を行った。

結果:全93眼のうちAdV54型が55眼,3型および19/64型がそれぞれ2眼検出された。対照キットおよび評価キットのそれぞれのPCR法に対する感度は89.8%,98.3%であり,特異度はいずれも100%であった。2種のIC法のPCR法陽性例における感度の差には有意差があった(p<0.01)。

結論:涙液を検体とした評価キットは結膜擦過が不要で,患者への負担が少なかった。専用機器で増感を行い,対照キットに比較して感度が高かった。評価キットは客観的で有用であると考えられた。

参考文献

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4)梅田由佳・中積泰人・瀬野晶子:銀増幅技術を応用したイムノクロマト法による高感度インフルエンザ迅速診断システムの特性とその運用についての検討.環境感染誌31:181-185,2016
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8)美川優子・佐藤修司・中尾陽子・他:アデノウイルス抗原検査における「結膜滲出液を含む涙液」の有用性.医学と薬学74:813-818,2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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