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特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[3] 原著
エルロチニブ使用後に発症したぶどう膜炎の1例
著者: 安田慎吾1 仲河正樹1 住岡孝吉1 白井久美1 田中才一1 雑賀司珠也1
所属機関: 1和歌山県立医科大学眼科学講座
ページ範囲:P.697 - P.701
文献購入ページに移動症例:78歳,女性。脳転移を伴う肺癌に対してエルロチニブ150mg/日内服加療が開始された。開始2週間後に下痢と低カリウム血症を生じ,いったん休薬となったが,2週間後にエルロチニブ内服が再開された。再開6日後に両眼の視力低下を主訴に受診となった。
所見:当科初診時の視力は右(0.5),左(0.4)で,両眼とも前房内炎症所見は著明で,硝子体混濁も伴っていた。エルロチニブが抗癌剤であるため,呼吸器内科と相談し,全身検索終了まではエルロチニブ内服を続行しつつベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼での治療となった。当科受診後にエルロチニブ内服は中止となり,炎症所見は徐々に改善し,2週間後に前房内炎症所見はほぼ消失した。経過中,炎症の強かった左眼にはデキサメタゾンのテノン囊下注射を施行した。経過中に左眼にぶどう膜炎が原因と考えられる黄斑牽引症候群が生じたものの,最終1年後の視力は左右とも(0.8)まで改善した。
結論:本症例は,エルロチニブ治療が契機で発症したぶどう膜炎の可能性がある。
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