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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科72巻5号

2018年05月発行

文献概要

特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[3] 原著

5歳,6歳の小児に対して行ったオルソケラトロジー2年間の治療成績

著者: 田中孟1 小林由佳1 神田真和1 井上千鶴1 中川聡子1 上野豊広1 武蔵国弘1

所属機関: 1医療法人創夢会 むさしドリーム眼科

ページ範囲:P.729 - P.733

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要約 目的:5歳,6歳時にオルソケラトロジー(オルソ)を開始し2年間経過観察できた小児について,オルソの安全性および眼軸長変化量を検討する。

対象と方法:5歳,6歳時にオルソを開始し2年間経過観察できたオルソ群9名18眼と,同年齢でオルソを行わなかった近視の小児10名20眼(オルソ非治療群)を対象に,屈折検査,視力検査,角膜内皮細胞密度(ECD),細隙灯顕微鏡検査などの検査から有効性や安全性を確認した。光学式眼軸長測定装置(OA-1000)で眼軸長を測定し,年間眼軸長変化量を比較した。

結果:オルソ群の治療開始時の平均眼軸長は24.10±0.48mm,等価球面度数(SE)は−2.74±0.96Dであった。2年経過後のSEは−0.19±0.37D,裸眼視力はlogMAR値で平均−0.07,ECDは治療前と有意差はなかった(p=0.643)。合併症は5名8眼に認められたが,重篤な合併症はなかった。オルソ群,非治療群の年間眼軸長変化量は1年目0.34±0.23mm,0.58±0.22mm(p=0.003),2年目0.30±0.16mm,0.50±0.15mm(p<0.001)で有意差があった。

結論:オルソ治療を2年間継続した結果,ECDへの影響や重篤な副作用は認められず,眼軸長変化量もオルソ群のほうが有意に小さかった。オルソは5歳,6歳児にも安全に行え,眼軸長伸長抑制に有用であった。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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