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特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[4] 原著
加齢黄斑変性,糖尿病および緑内障患者の受診率と手帳持参率の比較
著者: 小林博1
所属機関: 1国立病院機構関門医療センター眼科
ページ範囲:P.817 - P.826
文献購入ページに移動要約 目的:加齢黄斑変性患者,緑内障患者および糖尿病網膜症患者の病識を調べるために,受診率と手帳の持参率を比較検討した。
対象と方法:対象は,次回診察を予約した加齢黄斑変性患者170名(75.8±9.5歳,男性114名,女性56名),糖尿病患者377名(66.4±12.0歳,男性204名,女性173名)および緑内障患者513名(72.1±11.7歳,男性223名,女性290名)である。初診時に手帳を渡し,3年間にわたり受診率と持参率を調査した。
結果:加齢黄斑変性患者160名(94.1%),糖尿病患者304名(80.6%),緑内障患者396名(77.2%)が調査を完了した。全期間における持参率は,加齢黄斑変性患者が91.0%(3,700回中3,367回),糖尿病患者が89.3%(3,913回中3,495回),緑内障患者が92.7%(7,528回中6,981回)であり,有意差はなかった。いずれの疾患でも持参率は1年までは有意に上昇し(p<0.0001),その後は変化がなかった。50〜79歳では,加齢黄斑変性および緑内障患者は糖尿病患者に比較して持参率は有意に高く(p<0.002),加齢黄斑変性患者と緑内障患者では80歳以上の患者は50〜79歳の患者に比べて低率であった(p<0.0001)。いずれの疾患でも,脱落患者の手帳の持参率は調査完了患者に比較して有意に低率であった(p<0.01)。
結論:いずれの疾患でも,高齢化するに従い持参率は低下しており,脱落患者の手帳の持参率は調査完了患者に比較して有意に低率であった。同年齢層では,加齢黄斑変性および緑内障患者は糖尿病患者に比較して持参率は有意に高かった。
対象と方法:対象は,次回診察を予約した加齢黄斑変性患者170名(75.8±9.5歳,男性114名,女性56名),糖尿病患者377名(66.4±12.0歳,男性204名,女性173名)および緑内障患者513名(72.1±11.7歳,男性223名,女性290名)である。初診時に手帳を渡し,3年間にわたり受診率と持参率を調査した。
結果:加齢黄斑変性患者160名(94.1%),糖尿病患者304名(80.6%),緑内障患者396名(77.2%)が調査を完了した。全期間における持参率は,加齢黄斑変性患者が91.0%(3,700回中3,367回),糖尿病患者が89.3%(3,913回中3,495回),緑内障患者が92.7%(7,528回中6,981回)であり,有意差はなかった。いずれの疾患でも持参率は1年までは有意に上昇し(p<0.0001),その後は変化がなかった。50〜79歳では,加齢黄斑変性および緑内障患者は糖尿病患者に比較して持参率は有意に高く(p<0.002),加齢黄斑変性患者と緑内障患者では80歳以上の患者は50〜79歳の患者に比べて低率であった(p<0.0001)。いずれの疾患でも,脱落患者の手帳の持参率は調査完了患者に比較して有意に低率であった(p<0.01)。
結論:いずれの疾患でも,高齢化するに従い持参率は低下しており,脱落患者の手帳の持参率は調査完了患者に比較して有意に低率であった。同年齢層では,加齢黄斑変性および緑内障患者は糖尿病患者に比較して持参率は有意に高かった。
参考文献
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