文献詳細
特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[5]
甲状腺癌に伴った癌関連網膜症の1例
著者: 海老原悟志1 原雄時1 鈴木利根1 町田繁樹1
所属機関: 1獨協医科大学埼玉医療センター眼科
ページ範囲:P.1013 - P.1017
文献概要
症例:64歳,男性。2011年9月頃から両眼の視野狭窄と羞明を自覚した。2013年10月頃から両眼の視力低下と夜盲を訴えて近医を受診し,網膜色素変性と診断された。2016年8月に精査目的で当院を受診した。初診時の矯正視力は右0.15,左0.02であった。両眼の硝子体内に細胞を認め,両眼底は網膜色素上皮のびまん性萎縮と網膜血管の狭窄を呈していた。動的量的視野検査では両眼の視野が高度に狭窄し,網膜電図の最大応答は消失していた。PET-CTでは甲状腺右葉に18F-FDGの異常集積を認め,乳腺外科で甲状腺右葉切除術を施行した。病理診断は甲状腺乳頭癌であった。術後1年で視覚症状は若干改善し,矯正視力は不変であった。
結論:甲状腺乳頭癌は進行が緩徐で癌による症状を欠くことが多く,その診断がしばしば遅れる。続発性の網膜変性を疑った場合には,経過が長くともCARを考慮し,全身精査を行う必要があると考えられた。
参考文献
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