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特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著
感覚性外斜視の発生メカニズムの研究—片眼性黄斑部疾患における視力,眼位,両眼視機能,視野の検討
著者: 大沼学12 新井田孝裕2 原直人2 藤山由紀子2 薄井紀夫1 内海通1
所属機関: 1医療法人明徳会総合新川橋病院眼科 2国際医療福祉大学大学院保健医療学専攻視機能療法学分野視機能療法学領域
ページ範囲:P.1091 - P.1097
文献購入ページに移動対象と方法:対象は,片眼性の加齢黄斑変性(AMD)18例と,黄斑円孔(MH)13例,および年齢をマッチングさせた正常者対照群16例で,視力,眼位,両眼視機能(融像幅,立体視),および視野を比較した。AMDとMHの抽出条件は,健眼矯正視力1.0以上,患眼矯正視力0.6以下とした。融像幅は大型弱視鏡用に自作した円形単純図形を用いて測定し,近見立体視はTitmus stereo testsで評価した。視野はハンフリー10-2を用いて,中心窩閾値を含む全69点のトータル偏差から10dB以上感度低下した点を抽出し,その割合を障害率として算出した。
結果:31例中,患眼の抑制を呈したのは4例(12.8%),そのなかで斜視を呈したのは2例(6.4%)で,いずれもAMD症例であった。AMD群とMH群の患眼の視力および対照群を含めた融像幅に有意差はなかったが,視野ではAMD群の障害率が44.6%±34.2,MH群は10.5%±17.9であり,AMD群の障害率が有意に高かった(p<0.05)。患眼の抑制を示した4例の障害率は85.9%±16.4と中心視野の広範囲に存在し,さらに斜視を呈した2例の左右の視力差はlogMAR値で2.10,1.48と顕著であった。
結論:片眼性の黄斑部疾患では,視力の顕著な左右差と中心10°以内の視野で深く広範囲な障害が重なった場合に,両眼視の破綻をきたし感覚性斜視に移行すると考えられた。
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