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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科72巻9号

2018年09月発行

文献概要

特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著

ハイドロレス前囊下水晶体分離法

著者: 阿部徹1 阿部亜子1

所属機関: 1阿部眼科

ページ範囲:P.1229 - P.1234

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要約 目的:ハイドロダイセクションは超音波水晶体乳化吸引術(PEA)の遂行に重要な手技であるが,時にinfusion misdirection syndrome(IMS)の誘因となり,直後の手術継続が困難になる。今回,IMS予防のため,灌流液を注入しないハイドロレス前囊下水晶体分離(レス分離)法を考案した。

対象と方法:対象は2016年2月から,筆者らがレス分離法を用いてPEAを施行した連続400眼(PEA単独318眼,硝子体同時手術82眼)である。前囊切開後,20Gの稲村式マルチパーパスカニューラ先端をPEA用の強角膜創から,前囊下かつ水晶体赤道部付近まで囊に接しない程度に進めた。灌流液は注入せず,カニューラ先端を横に滑らせ,可動範囲(2時から10時までの下方約2/3周)のレス分離を行った。レス分離後,カニューラ先端で水晶体核回転を試みた。レス分離直後の水晶体核回転不能眼では,核分割後に再び核回転を試みた。

結果:400眼中,レス分離直後に321眼(80.3%)の水晶体核が回転した。水晶体核分割後に再び回転を試みた74眼(18.5%)の核がさらに回転した。5眼(1.3%)は,核分割後の再試行でも回転せず,粘弾性物質によるビスコダイセクションで水晶体核を回転させた。レス分離による毛様小帯脆弱化はなかった。今回のレス分離時期の重篤なIMSの発症は0%(0/400)である。

結論:レス分離を施行した400眼中395眼(98.8%)で水晶体核の回転が可能であった。レス分離により,IMSの予防効果が期待できる。

参考文献

1)永本敏之:infusion misdirection syndrome(IMS).大鹿哲郎(編):眼手術学5 白内障.470-475,文光堂,東京,2012
2)谷口重雄:Zinn小帯断裂(カプセルエキスパンダー).大鹿哲郎(編):眼手術学5 白内障.397-403,文光堂,東京,2012
3)小幡博人:白内障手術に必要な解剖.大鹿哲郎(編):眼手術学5 白内障.2-6,文光堂,東京,2012
4)松尾健治:非水流核皮質分離の超音波乳化吸引術.IOL & RS 21:71-75,2007
5)松尾健治・松尾 優:ハイドロを行わない超音波乳化吸引術の最新方法.臨眼70:1287-1292,2016
6)Masuda Y, Tsuneoka H:Hydrodissection-free phacoemulsification surgery:Mechanical cortical cleaving dissection. J Cataract Refract Surg 40:1327-1331, 2014
7)昌原英隆:水流核皮質分離.大鹿哲郎(編):眼手術学5 白内障.181-185,文光堂,東京,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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