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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科72巻9号

2018年09月発行

文献概要

特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著

肺癌の虹彩転移に対し前房水細胞診が有用であった1例

著者: 草開隆佑1 加賀郁子1 山田晴彦1 杉本八寿子1 植村芳子2 髙橋寛二1

所属機関: 1関西医科大学眼科学講座 2関西医科大学病理学教室

ページ範囲:P.1249 - P.1255

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要約 目的:肺の扁平上皮癌が虹彩毛様体に転移し,前房水の細胞診が診断に有用であった症例の報告。

症例:54歳男性が左眼の充血と霧視で紹介され受診した。10か月前に肋骨移転を伴う肺の扁平上皮癌(Stage Ⅳ)と診断され,放射線照射と化学療法が行われていた。

所見と経過:左眼の矯正視力は1.2,眼圧は38mmHgであった。左眼の虹彩上方に隆起性病変と下方隅角を占拠する腫瘤があった。肺癌の虹彩転移を疑い,化学療法を再開した。1か月後に隅角の腫瘤と前房水を採取した。腫瘤は判定不能であったが,房水の細胞診で原発巣と類似した細胞が認められ,肺癌の虹彩転移と診断した。その後,虹彩腫瘍は化学療法の結果として縮小し,初診から7か月後に全身状態が悪化し,不帰の転帰をとった。

結論:転移性虹彩腫瘍は,頻度は稀であるが,生命予後が不良なため,診断には低侵襲の検査が望まれる。本症例では前房水の細胞診が低侵襲で,診断に有用であった。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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