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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科72巻9号

2018年09月発行

文献概要

特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著

90歳以上の高齢者糖尿病に対する眼科診療の実態

著者: 加藤真央1 福嶋はるみ1 加藤聡2 廣瀬晶1 佐伯忠賜朗1 佐伯新子1 片桐真樹子1 鈴木裕太1 小城原理穂1 竹島圭悟1 北野滋彦1

所属機関: 1東京女子医科大学糖尿病センター眼科 2東京大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.1291 - P.1295

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要約 背景:糖尿病のある高齢者に対しては,内科分野では認知機能や日常生活動作,合併疾患,社会・経済的状態などを総合的に評価し,患者ごとに最適な糖尿病治療を選択するようになってきた。その一方,眼科分野では高齢者糖尿病の管理方針が確立されず,医師の裁量によって診療が行われてきた。

目的:90歳以上の高齢者での糖尿病網膜症に対する管理の実態の報告。

対象と方法:当大学糖尿病センターの内科を2017年9月までの6か月間に受診した糖尿病患者のうち,90歳以上の117人を対象とし,診療録の記述に基づいて患者の背景,糖尿病網膜症の状態と治療歴を検討した。

結果:対象者のうち52人(44%)は,過去2年間に眼科を受診していなかった。眼科に定期的に通院している65人(56%)のうち,その間隔は1年に一度が16人(25%),半年に一度が14人(22%),1〜4か月に一度が35人(54%)であった。最終受診時に活動性の増殖糖尿病網膜症のある症例はなかった。10年以内に網膜症の進行防止の目的で光凝固を受けた症例はなく,5年以内に蛍光眼底造影が行なわれた症例も皆無であった。

結論:90歳以上の超高齢者では,活動性の糖尿病網膜症がなく,積極的な治療も行われていなかった。若年者と同様な定期受診ではなく,視力低下などがあった場合にのみ眼科を受診すればよいと結論される。

参考文献

1)厚生労働省:平成26年(2014)患者調査の概況.厚生労働省ホームページより〈http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/14-2/〉2017年12月15日アクセス
2)日本老年医学会・日本糖尿病学会:高齢者糖尿病診療ガイドライン2017.南江堂,東京,2017
3)中江公裕・増田寛次郎・妹尾 正・他:我が国における視覚障害.網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究.平成17年度 総括・分担研究報告書,厚生労働科学研究研究費補助金難治性疾患克服研究事業263,2006
4)Misra A, Bachmann MO, Greenwood RH et al:Trends in yield and effects of screening intervals during 17 years of a large UK community-based diabetic retinopathy screening programme. Diabet Med 26:1040-1047, 2009
5)Hirvelä H, Laatikainen L:Diabetic retinopathy in people aged 70 years or older. The Oulu Eye Study. Br J Ophthalmol 81:214-217, 1997
6)Klein R, Klein BE, Moss SE:Epidemiology of proliferative diabetic retinopathy. Diabetes Care 15:1875-1891, 1992
7)Tye A, Wharton H, Wright A et al:Evaluating digital diabetic retinopathy screening in people aged 90 years and over. Eye(Lond) 29:1442-1445, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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