icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科73巻1号

2019年01月発行

文献概要

臨床報告

タクロリムス点眼使用開始後に角膜ヘルペスを生じた5例

著者: 宍道紘一郎12 近間泰一郎2 井之川宗右2 戸田良太郎2 木内良明2

所属機関: 1広島赤十字・原爆病院眼科 2広島大学病院眼科

ページ範囲:P.79 - P.85

文献購入ページに移動
要約 目的:タクロリムス点眼の使用中に角膜ヘルペスが生じた5例の記述と,その背景の報告。

対象と方法:2016年までの5年間に,タクロリムス点眼を使用し3か月以上経過観察ができた49例を対象とし,基礎疾患と角膜ヘルペスとの関連と危険因子などを検討した。

結果:49例中5例で角膜ヘルペスが生じた。5例の内訳は,男性4例,女性1例で,年齢は7〜42歳,中央値は40歳であった。角膜ヘルペスは3例で両眼に,2例で片眼に発症した。角膜ヘルペスは,タクロリムスの使用開始から14〜240日後,中央値36日後に生じた。5例中4例に角膜ヘルペスの既往があり,有意に多かった(p<0.05)。アシクロビルの点眼または内服で,角膜ヘルペスは治癒した。タクロリムス点眼を使用した49例は,男性32例,女性17例で,23例にアトピー性皮膚炎,37例に春季カタルなどアレルギー性角膜疾患,6例に角膜ヘルペスの既往があった。

結論:アトピー性皮膚炎または角膜ヘルペスの既往がある症例では,タクロリムスの点眼で,角膜ヘルペスが発症または再発しやすい。

参考文献

1)大橋裕一・内尾英一・海老原伸行・他:免疫抑制点眼薬の使用指針—春季カタル治療薬の市販後全例調査からの提言.あたらしい眼科30:487-498,2013
2)Ohashi Y, Ebihara N, Fujishima H et al:A randomized, placebo-controlled clinical trial of tacrolimus ophthalmic suspension 0.1% in severe allergic conjunctivitis. J Ocul Pharmacol Ther 26:165-173, 2010
3)タリムス点眼液0.1%インタビューフォーム(改訂第8版).千寿製薬株式会社,2016年7月
4)藤田英樹・朝比奈昭彦:ステロイド外用薬と局所カルシニューリン阻害薬の作用機序の相違.治療学39:37-41,2005
5)福島敦樹:重症アレルギー性結膜疾患におけるT細胞の役割.臨眼59:136-141,2005
6)原田奈月子・稲田紀子・石森秋子・他:春季カタルにおけるタクロリムス点眼液治療の臨床経過の検討.日眼会誌118:378-384,2014
7)品川真有子・南場研一・北市伸義・他:春季カタルにおけるタクロリムス点眼薬の長期使用成績.臨眼71:343-348,2017
8)Fukushima A, Ohashi Y, Ebihara N et al:Therapeutic effects of 0.1% tacrolimus eye drops for refractory allergic ocular diseases with proliferative lesion or corneal involvement. Br J Ophthalmol 98:1023-1027, 2014
9)高村悦子・内尾英一・海老原伸行・他:春季カタルに対するシクロスポリン点眼液0.1%の全例調査.日眼会誌115:508-515,2011
10)井上幸次:アトピー性皮膚炎と眼感染症.臨眼57:40-45,2003
11)Souza PM, Holland EJ, Huang AJ:Bilateral herpetic keratoconjunctivitis. Ophthalmology 110:493-496, 2003
12)Wilhelmus KR, Falcon MG, Jones BR:Bilateral herpetic keratitis. Br J Ophthalmol 65:385-387, 1981
13)Garrity JA, Liesegang TJ:Ocular complications of atopic dermatitis. Can J Ophthalmol 19:21-24, 1984
14)Prabriputaloong T, Margolis TP, Litterman TM et al:Atopic disease and herpes simplex eye disease:a population-based case-control study. Am J Ophthalmol 142:745-749, 2006
15)白根授美:角膜上皮細胞と角膜実質細胞におけるケモカイン産生能の解析:ヘルペス性角膜実質炎におけるケモカイン系の役割.近畿大学医学誌28:247-258,2003
16)Kibrick S, Takahashi GH, Howard ML et al:Local corticoid therapy and reactivation of herpetic keratitis. Arch Ophthalmol 86:694-698, 1971
17)アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン編集委員会:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(改訂第2版).日眼会誌114:830-870,2010
18)稲谷 大:ステロイド緑内障の今.あたらしい眼科26:295-299,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら