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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科73巻10号

2019年10月発行

雑誌目次

特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著

帝京大学医学部附属病院における開放性眼外傷の検討

著者: 北川達士 ,   寺内岳 ,   越智正登 ,   浜野茂樹 ,   矢倉和磨 ,   渡邊恵美子 ,   溝田淳

ページ範囲:P.1267 - P.1274

要約 目的:帝京大学医学部附属病院で加療した開放性眼外傷の報告。

症例と方法:2009年4月からの8年間に当院で初期治療を行った62例62眼につき,最終視力に影響する因子を解析した。視力はlogMARとして評価した。

結果:男性28例,女性34例であり,62例の平均年齢は66.1±16.4歳であった。眼球破裂が52例,眼球穿孔が8例で,眼内異物と二重穿孔の症例はなかった。術前の平均視力は2.43±0.64,術後の平均視力は1.59±1.24で,有意に改善していた。因子解析では,網膜剝離,水晶体偏位・脱臼,硝子体出血,前房出血の有無,受傷機転と視力予後との相関があった。破裂部位と視力予後の間には相関がなかった。

結論:開放性眼外傷では,破裂の位置や大きさではなく,眼組織への損傷の程度が,最終視力に対する有意な因子であった。

血管新生緑内障に対する2種類のチューブシャント手術の術後成績の比較

著者: 田部早織 ,   稲崎紘 ,   井上麻衣子 ,   山根真 ,   門之園一明

ページ範囲:P.1275 - P.1279

要約 目的:血管新生緑内障(NVG)に対するバルベルト緑内障インプラント(BGI)とアーメド緑内障バルブ(AGV)手術の術後成績の比較検討。

対象と方法:NVGに対していずれかのチューブシャント手術を施行され,6か月以上経過観察した36例37眼を対象とし,術前後の眼圧,有害事象について検討した。

結果:36例37眼(BGI 20例21眼,AGV 16例16眼)。平均年齢は64.5±13.7歳,BGIの術前,術後6か月の平均眼圧は38.1±9.9mmHg,15.7±5.5mmHg,AGVの術前,術後6か月の平均眼圧は41.6±8.9mmHg,14.7±5.3mmHgと両群ともに有意に低下した(p<0.05)。有害事象はBGIでチューブ閉塞(2眼),前房出血(1眼),硝子体出血(1眼),脈絡膜剝離(3眼),AGVでチューブ閉塞(1眼),前房出血(1眼),網膜剝離(1眼)であった。

結論:NVGに対するチューブシャント手術はいずれの術式においても良好に眼圧を下降させる。合併症の発症頻度に関しては有意差がなかった。

旧基準では視覚障害の身体障害者手帳の申請が却下となった2例のFunctional Vision Score評価

著者: 鶴岡三惠子 ,   井上賢治

ページ範囲:P.1281 - P.1289

要約 目的:視覚の身体障害者手帳を2018年7月以前に申請し却下となった2例について,2018年7月以降の新基準での身体障害者手帳の等級のFunctional Vision Score(FVS)の評価を行い比較したので報告する。

症例:症例1は,50代の男性。緑内障で井上眼科病院を受診中である。矯正視力は右0.3,左0.4であった。眼圧は右9mmHg,左11mmHgであった。ゴールドマン視野(GP)は,湖崎分類で右Ⅲb,左Ⅲaであった。症例2は50代の男性。緑内障で井上眼科病院を受診中である。矯正視力は右1.2,左1.0であった。眼圧は右12mmHg,左11mmHgであった。GPは湖崎分類で右Ⅳ,左Ⅱbであった。

結果:症例1は新基準での等級が視野5級,FVSの評価はFunctonal Acuity Score(FAS) 79,Functional Field Score(FFS) 79,FVS 62であった。AMA Classはclass 2の中等度視覚喪失であった。症例2は新基準が視野5級,FVSの評価はFAS 100,FFS 75,FVS 75であった。AMA Classはclass 1の軽度視覚喪失であった。

結論:旧基準で手帳が却下決定となった2例は,新基準では2例とも視野障害5級に該当であった。FVSでは症例1のみがWHOのlow visionの範囲に該当した。

福岡大学病院における最近10年間のアカントアメーバ角膜炎の治療成績

著者: 大塩毅 ,   佐伯有祐 ,   岡村寛能 ,   内尾英一

ページ範囲:P.1291 - P.1296

要約 目的:アカントアメーバ角膜炎(AK)は再発性炎症性疾患であり,高度の治療を要し長期入院が必要となることが多い。標準的な治療法は,抗真菌薬の局所および全身投与,消毒薬の局所投与,角膜搔爬の3者併用療法であるが,AKに対する手術適応は定まっていない。筆者らは最近10年間における当院のAK症例の薬物および手術治療の成績を報告する。

対象と方法:2008〜2018年に当院でAKと診断し,入院治療を行った22例(男性10例,女性12例)を対象とし,背景,臨床所見,治療内容および視力予後について検討した。

結果:全例がコンタクトレンズを使用しており,21例がソフトレンズ,1例がハードレンズであった。アカントアメーバは11例(50%)から分離され,残りの症例は特徴的な臨床所見から診断した。全例に局所および全身の抗真菌薬,消毒薬点眼(0.02%グルコン酸クロルヘキシジン),角膜搔爬の3者併用療法を行った。補助療法としてペンタミジンイセチオン酸塩投与を20例(91%)に施行した。これらの治療に抵抗した5例に対して,ビッグバブル法を併用した深部表層角膜移植(DALK)を全例に行い,術中・術後合併症はなかった。平均入院期間は25日であり,AKの再燃はなかった。

結論:AKに対する3者併用療法は有効と考えられる。3者併用療法に治療抵抗性の重症例には手術治療が有用であり,良好な視力予後と治療期間の短縮が得られた。

血液透析中に両眼の眼圧上昇をきたした眼内レンズ縫着後眼の1症例

著者: 二宮以信 ,   渡邉慧 ,   深瀬沙綾 ,   岡本昌大 ,   岡本祥正 ,   牧田侑子 ,   高原久嗣 ,   林野久樹 ,   海老原伸行

ページ範囲:P.1297 - P.1302

要約 目的:両眼の眼内レンズ(IOL)縫着術後に,透析中に高眼圧をきたした1症例を報告する。

症例:50歳,男性。生来片腎で34歳時より人工透析を行っている。40歳台前半に両白内障手術,47歳時に右IOL縫着術,48歳時に左IOL縫着術を施行。その頃より徐々に眼圧が高値となり点眼加療していた。6か月前から透析中に左眼の疼痛と霧視を自覚していた。透析終了直後の近医受診時に両眼圧上昇を認め当院紹介となった。

所見:初診時眼圧は右14mmHg,左24mmHg。左IOLは偏心し,虹彩裏面と接触を認めた。両隅角は開放,線維柱帯に色素沈着を認めた。視神経光干渉断層計で両眼に緑内障性視神経変化はなかった。初回透析開始前の眼圧は右12mmHg,左18mmHgであったが,透析後右24mmHg,左50mmHgに上昇した。透析-透析間の体重増加抑制のため飲水制限を行い,透析中グリセオール投与で眼圧上昇が緩和され,透析終了3時間後には眼圧が正常化した。その後再度の眼圧上昇があり,線維柱帯切開術と周辺虹彩切除を施行したが,再び眼圧上昇したため線維柱帯切除術を施行したところ,最終的に眼圧が安定した。

結論:房水流出障害をもつ透析患者では,透析時の眼圧上昇に注意を要する。透析時の眼圧上昇では血漿浸透圧の低下を抑制することが効果的であるが,観血的治療を要する場合がある。

化学療法が短期間で著効したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫による眼瞼結膜リンパ腫の1例

著者: 迫野能士 ,   水島崇 ,   椎原秀樹 ,   寺﨑寛人 ,   上笹貫太郎 ,   徳永雅仁 ,   土居範仁 ,   坂本泰二

ページ範囲:P.1303 - P.1307

要約 目的:全身のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対して化学療法を行った結果,DLBCLと思われる結膜病変に対しても化学療法が著効した1例を報告する。

症例:62歳,男性。両鼠径部リンパ節に原発したDLBCLの既往があり,8クールのR-CHOP療法で寛解していた。しかし,定期検査時の陽電子放出断層撮影で多数のリンパ節に集積があり,鎖骨上リンパ節生検の結果DLBCLの再発と診断された。同時期に眼瞼結膜の腫脹があり,当院眼科を受診した。両眼ともに下眼瞼結膜に2.5mm程度のサーモンピンク色の隆起性病変を認め,眼瞼結膜に生じたDLBCLを疑った。CHASE療法が開始され,1週間で眼病変は消退した。

結論:両眼性に眼瞼結膜に生じるDLBCLに化学療法が奏効し,視機能障害や瘢痕を残さない症例を経験した。

トリアムシノロンアセトニドテノン囊下注射により眼球穿孔を生じた1例

著者: 谷彰浩 ,   香留崇 ,   仙波賢太郎 ,   三田村佳典

ページ範囲:P.1308 - P.1312

要約 目的:トリアムシノロンアセトニド(TA)テノン囊下注射により眼球穿孔を生じた1例の報告。

症例:48歳,男性。前医でぶどう膜炎増悪のため27G鋭針で左眼トリアムシノロンアセトニド(TA)20mgテノン囊下注射を施行し,直後に眼痛と視力低下を自覚した。角膜上皮浮腫,眼圧上昇,硝子体腔にTAを認めたため眼球穿孔を疑われ,同日に当科を紹介され受診した。左眼視力10cm指数弁,眼圧は前房穿刺後で5mmHg,眼軸長は27.78mmであった。軽度の角膜上皮浮腫と硝子体内腔にTA,上方結膜に結膜下出血を認めた。眼底は透見不能で,超音波検査にて眼球内に塊状の異常陰影があり,網膜剝離は検出できなかった。上方強膜からの眼球穿孔,TA眼内注入と考え,同日緊急で硝子体手術を施行した。術中,眼内に塊状のTA,上方に網膜裂孔,その周囲に出血性の網膜剝離を認めた。裂孔周囲を眼内レーザーで凝固し,20% SF6ガスタンポナーデで手術を終了した。手術2週間後,左眼視力は(1.0),眼圧は11mmHgとなった。眼内TAは消失し,網膜は復位していた。

結論:テノン囊下注射は,その手技による合併症の頻度は少ないとされているが,長眼軸,鋭針の使用は眼球穿孔の危険因子となる。眼球穿孔に対しては早急な硝子体手術が有効であった。

両耳側半盲を呈した抗アクアポリン4抗体陽性視交叉炎の1例

著者: 青木沙由莉 ,   戸所大輔 ,   篠原洋一郎 ,   高橋利幸 ,   秋山英雄

ページ範囲:P.1313 - P.1318

要約 目的:両耳側半盲を呈し抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性視交叉炎と診断され,ステロイドパルス療法が著効した症例の報告。

症例:68歳,女性。2か月ほど前から原因不明の両眼の視力低下があり,群馬大学医学部附属病院を紹介され受診した。

所見:視力は右0.3,左0.2で,視野検査で両耳側半盲があり,頭部ガドリニウム造影MRIで視交叉部に造影増強を認めた。血液検査で抗AQP4抗体陽性であった。AQP4抗体陽性視交叉炎と診断し,メチルプレドニゾロンによるステロイドパルス療法を施行した。ステロイド治療後,視力は右1.0,左0.9となり,視野障害も改善し,頭部造影MRIで視交叉部の造影効果は減弱した。後療法としてプレドニゾロン10mg/日内服を続けており,現在まで再発はない。

結論:抗AQP4抗体陽性視交叉炎がステロイドパルス療法で改善した。両耳側半盲を呈し視交叉部腫瘍を認めない場合,視交叉炎の可能性を念頭に置くべきである。

ぶどう膜炎の黄斑浮腫に対しメトトレキサート硝子体注射を行った2症例

著者: 梶田敬介 ,   江川麻理子 ,   三田村佳典

ページ範囲:P.1319 - P.1326

要約 目的:非感染性ぶどう膜炎に合併する囊胞様黄斑浮腫(CME)に対しメトトレキサート硝子体注射(IVMTX)を行った2例を報告する。

対象と方法:当院を受診した非感染性ぶどう膜炎のCME症例で,ステロイド治療が困難なものを対象とした。IVMTXは徳島大学臨床研究倫理審査委員会で承認を得て行い,1回400mg/0.1mlを投与した。

症例:1例は55歳の男性で,サルコイドーシスによるぶどう膜炎。ステロイド内服で周辺炎症は改善したが,左眼の黄斑上膜形成と黄斑浮腫が遷延し,ステロイドテノン囊下注射(STTA)を施行したが無効であった。ステロイド緑内障を発症したためIVMTXを行ったが,CMEの改善はなかった。前房フレア値の変動はなかった。他の1例は61歳の女性で,サルコイドーシス様の眼所見を示す原因不明のぶどう膜炎。ステロイド内服を行ったが,左眼にCMEが残存し,ステロイド緑内障を発症したためIVMTXを行った。中心窩網膜厚は投与前626μm,2か月後479μmと減少したが,CMEは消失せず,IVMTXを計4回行った。経過中前房フレア値の大きな変動はなく,注射による合併症はなかった。

結論:1例でCME軽減効果がみられたが,3か月で再発を繰り返した。IVTMXは限定的な効果しかなかった。

小児に発症したネコ引っ搔き病によるぶどう膜炎が疑われた1例

著者: 反田蓉子 ,   市川浩平 ,   朝岡聖子 ,   土至田宏 ,   蕪城俊克 ,   太田俊彦

ページ範囲:P.1327 - P.1333

要約 目的:ネコ引っ搔き病によるぶどう膜炎が疑われた1例の報告。

症例と方法:10歳の女児が,1か月前からの左眼後極部の漿液性網膜剝離と脈絡膜新生血管で当院を紹介され受診した。1年前から春季カタルとして某医で加療中であり,半年前に左眼黄斑部に漿液性網膜剝離が生じたが,ステロイド点眼により2か月で寛解したという。

所見と経過:初診時の矯正視力は,右1.2,左0.4であった。眼圧は正常範囲で,両眼の前眼部に非肉芽腫性角膜後面沈着物,前房水中浮遊細胞,虹彩根部の前癒着があった。左眼の黄斑部に滲出性病変,両眼に乳頭の発赤と腫脹,雪玉状の硝子体混濁があった。フルオレセイン蛍光眼底造影で両視神経乳頭の過蛍光,両網膜静脈周囲炎,眼底の滲出部位と一致する過蛍光があった。ネコに噛まれたことがあり,抗Bartonella henselae IgG値が256倍であった。以上よりネコ引っ搔き病によるぶどう膜炎が疑われ,抗菌薬内服,ステロイド点眼および内服を開始した。左眼視力は上昇したが,左眼の黄斑部滲出と両眼の静脈周囲炎は持続した。ステロイド内服をメトトレキサート内服に切り替え,視力と網膜病変の改善が得られた。

結果:ネコ引っ搔き病によると推定される小児ぶどう膜炎で,ステロイド長期内服の代替治療としてメトトレキサート内服が有効であった。

外眼筋肥厚を伴う先天性固定斜視の1例

著者: 萩元裕作 ,   築留英之 ,   黒瀬大輔 ,   内山恵理子 ,   岡晃子 ,   都築欣一 ,   久保朗子 ,   近藤峰生

ページ範囲:P.1335 - P.1339

要約 目的:先天性の外眼筋肥厚が原因と考えられる重度の固定内斜視の小児の1例を報告する。

症例:3か月,男児。生後から右眼の眼球後退を伴う固定内斜視であった。右眼の眼球運動は全方向で強く制限されていた。

経過:活動性の炎症や腫瘍性病変は否定的であったため,生後5か月時に右内直筋と下直筋の切腱を施行した。術後,眼位は著しく改善した。

結論:外眼筋肥厚が原因と考えられる先天性の重篤な固定内斜視の症例に右内直筋と下直筋切腱を施行して眼位の改善が得られた。

あけお眼科医院における光干渉断層計導入に伴う電子カルテシステムの再構築

著者: 明尾潔 ,   明尾庸子 ,   明尾慶一郎 ,   加藤帝子

ページ範囲:P.1341 - P.1347

要約 目的:光干渉断層計(OCT)の画像データの保存と管理,電子カルテ,ハンフリー視野計(HFA),および眼底カメラとのネットワーク連携,記憶媒体の容量について検討を行ったので報告する。

方法:電子カルテはドクターソフト®,画像ファイリングシステムとして,HFAにはBeeFiles®,眼底カメラにはvk-2®,OCTにはNAVIS-EX®,コンピュータ操作システムにはWindows®を用いた。パーソナルコンピュータは診察室4台(サーバー,緊急時サーバー,眼底カメラ,OCT),受付1台,視野検査室2台,医局2台を配置し,OCT,HFA,眼底カメラ,電子カルテのデータ量を調べた。眼底カメラ,HFAは院内ローカルエリアネットワークのみと接続した。

結果:1眼あたりのデータ量はOCTでは最大17.3MB,HFAは12kB,眼底撮影は317kB,1来院あたりの電子カルテは64kBであり,OCTのデータ量は55〜1,476倍であった。OCTのデータはネットワークを経由せず,単独でハードディスク(HD)に管理した。HDは電子カルテ,HFA,眼底カメラ用に250GB,OCT用に2TBの容量が必要であった。

結論:OCTの検査結果を患者と供覧し,ネットワーク上のセキュリティリスクを回避しながら,データを保存するためにはバックアップ用の記憶媒体の容量の確保が重要であった。

自院の手術統計からみた季節性について—特に網膜剝離手術について

著者: 山田成明 ,   辻屋壮介 ,   高辻樹理 ,   西野翼

ページ範囲:P.1349 - P.1354

要約 目的:富山県立中央病院(当院)での眼科手術を分析し,特に網膜剝離手術などの季節性を検討すること。

対象と方法:2013〜2016年の4年間に当院で行われた眼手術を,年度別,月別,疾患と術式ごとに件数を調べた。厚生労働省のデータも引用した。

結果:対象とした4年間に145件の網膜剝離手術が行われた。各年度の手術数は,それぞれ42,27,27,49件であった。手術件数は5月と10月に増加している傾向があった。眼科での超過勤務時間は,手術の件数が多い月に増加する傾向があった。全国の網膜剝離手術件数は約22,000件であった。推定すると,わが国での網膜剝離の発症頻度は,年間1万人に2人に近いと思われる。

結論:緊急手術が必要な眼疾患の季節性が予測できれば,医師の超過勤務対策になる可能性がある。

連載 今月の話題

半導体レーザー装置CYCLO G6®の原理と効果

著者: 藤代貴志

ページ範囲:P.1239 - P.1245

 半導体レーザー装置CYCLO G6®を用いたマイクロパルス毛様体光凝固術の治療成績は,眼圧下降は良好で,術後の合併症が少ないと報告されているが,これまでのところ報告は海外からのものだけで,わが国では有効性と安全性を示した報告がない。今回,CYCLO G6®を用いた毛様体光凝固術の治療の原理とその有効性と安全性について解説したい。

症例から学ぶ 白内障手術の実践レクチャー・術後編21

白内障術後眼内炎

著者: 井上智之

ページ範囲:P.1246 - P.1250

Q 78歳女性が右眼白内障手術を3週前に受けました。数日前より霧視が悪化し,今朝よりほとんど見えなくなりました。眼痛を自覚しています。右視力0.01で,左眼に異常はありません。前眼部写真と眼底写真は図1,2の通りです。本症例の疾患について,眼科臨床医が知っておくべき知識と最新の情報について教えてください。

眼炎症外来の事件簿・Case14

急速に進行した片眼性の多巣性脈絡膜炎

著者: 慶野博

ページ範囲:P.1252 - P.1255

患者:63歳,男性

主訴:左眼の視野の暗さ

既往歴・家族歴:特記事項なし

現病歴:2週間前から左眼の視野全体の暗さを自覚した。近医での眼底検査にて左眼後極部を中心に散在する白斑がみられ,ぶどう膜炎疑いにて当院を受診した。

臨床報告

高齢で発見された脈絡膜骨腫の1例

著者: 梯瑞葉 ,   丸子一朗 ,   古田実 ,   飯田知弘

ページ範囲:P.1259 - P.1265

要約 背景:脈絡膜骨腫の典型例は,若年女性に好発するとされ,経時的に網膜色素上皮の萎縮や骨腫部の脱灰が生じる。

目的:68歳で発見された脈絡膜骨腫の非典型例の報告。

症例:68歳の女性が人間ドックで右眼黄斑部の異常が発見されたため,当科を紹介され受診した。人間ドックは毎年受診していて,今までに眼底の異常は指摘されていなかった。

所見と経過:右眼の矯正視力は1.2であり,右眼の黄斑上方に境界が鮮明で橙赤色の長径が4乳頭径大の隆起があった。脈絡膜血管腫が疑われた。フルオレセイン蛍光眼底造影では初期からブロックによる低蛍光を示した。光干渉断層計での断層像に減衰があり,超音波エコーで脈絡膜の隆起と高輝度があり,その後方にacoustic shadowがあること,CTで眼球壁に沿った高吸収像があることから,脈絡膜骨腫と診断した。

結論:脈絡膜骨腫が68歳の女性の片眼に診断された。今まで毎年行われていた人間ドックで発見されなかったことは,網脈絡膜萎縮が軽度で,骨形成がCTでのみ証明されたことから,骨腫がまだ初期であったためと推定される。

今月の表紙

小口病

著者: 永野幸一 ,   稲谷大

ページ範囲:P.1251 - P.1251

 17歳,女性。幼少時より暗所での見えづらさを自覚していたが,症状の悪化がなかったため眼科を受診することはなかった。2017年4月にコンタクトレンズの処方を希望して前医を受診したところ,眼底後極部の色調変化や周辺部の網膜色素上皮変性を疑う所見があったため,精査加療目的で当院を紹介され受診した。

海外留学 不安とFUN・第46回

—パリの空の下で働く・3—フランスでの仕事編

著者: 篠島亜里

ページ範囲:P.1256 - P.1257

カルテの切り替え

 私は以前に日本で勤めていた職場で,新病院設立に伴い,紙カルテから電子カルテに移行した時期を経験しましたが,ちょうどラリボワジエール病院も,その移行期を迎えていました。そのため,患者さんの番号がいくつも存在し,まるで暗号を解くように,紙カルテをカルテ庫へ行って探さねばなりませんでした。カルテはもちろんフランス語で書かれているので,フランスへ留学を検討される方はフランス語を習得しておくことが望ましいと思います。カルテ庫のフランス人スタッフとはすっかり仲良くなり,カルテを探しに行くたびにジュースをご馳走になっていました。

Book Review

脱・しくじりプレゼン—言いたいことを言うと伝わらない!

著者: 飯原弘二

ページ範囲:P.1280 - P.1280

 医師の日常は,臨床カンファレンスから学会発表,研究成果発表会など,プレゼンの機会に事欠きません。若手の医師にとっては,初の全国学会での口演発表,中堅医師では,シンポジウムの発表,共催セミナーでの口演が当たると,大変うれしいものです。また公的研究費の獲得や公的なポストへの昇進など,プロフェッショナルとしてのキャリアをアップするうえでも,プレゼンの重要性に異を唱える人はいないと思います。しかし,いかに仕事の内容が素晴らしくても,聴衆に効果的に伝える努力を私たちは十分しているでしょうか? 今から思いますと,私も若いころ,かなり独り善がりなプレゼンをしていたように思います。

 このたび医学書院から,医療者向けに『脱・しくじりプレゼン』が刊行されました。編著者は,名著『パーフェクトプレゼンテーション』(生産性出版,1995)で有名な八幡紕芦史氏です。私自身,プレゼンの基本を八幡氏から学んだ1人です。本書は,多忙な臨床医や研究者向けに,プレゼンの極意を,マンガと丁寧なレクチャーでビジュアルに解説しています。効果的なプレゼンには,事前の情報収集と分析がまず必要なこと,聞き手に当事者意識を持たせることを示して,さまざまな場面での失敗の要因を分析しています。デリバリーとは,まさに伝えるテクニックです。内容を聴衆に理解してもらい,さらに信頼してもらえるかは,このデリバリーの技術にかかっています。また,研究費の獲得や公的なポストへの昇進でのプレゼンでは,プレゼン後の質疑応答が,より大切になってきます。この質疑応答の成否は,深い意味では,プレゼンした内容が,いかにあなたの実体験に基づいているかにかかっています。本当に身についた知識や内容であれば,聴衆は本当に理解して,共感してくれると思いますが,プレゼンの目的や聴衆はさまざまだと思います。本書は,さまざまな局面で,「しくじらない」ためのノウハウを満載しています。Practice makes perfect! 皆さん,本書をひもときながら,ぜひ多くのプレゼンをしてください。その後,本書を読み返すと,さらに大きな発見があると思います。

プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト

著者: 祖父江元

ページ範囲:P.1290 - P.1290

 解剖学は医学生が医学に接する最初の関門であり,医学に対する期待を実感する場でもあります。しかし,同時に膨大な専門用語に最初に接する場でもあり,暗記に陥りやすい場でもあります。場合によると無味乾燥に陥ってしまう“難関”でもあります。私自身の経験でも骨の突起の一つひとつをスケッチしてラテン語を付すという延々と続く作業にうんざりしてしまったことがあります。このたび発刊された『プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト』は,まさにこの解剖学の難関を突破する書であると思います。

 監訳者の中野隆先生は,おそらく解剖学の教育にかけては,わが国の第一人者であると思います。

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目次

ページ範囲:P.1234 - P.1235

欧文目次

ページ範囲:P.1236 - P.1237

ことば・ことば・ことば 灰内障

ページ範囲:P.1258 - P.1258

 Glaucomaがなぜ「緑内障」なのかは,知っているつもりでした。

 河本重次郎の「眼科学」は,明治時代を代表する教科書でした。明治44年(1911)に出た第16版がいま手元にあります。上中下の3冊本で,全部で900ページもある立派な本です。

べらどんな 新疾患

著者:

ページ範囲:P.1318 - P.1318

 桐沢長徳先生は,昭和46年(1971年)まで東北大学の眼科教授として勤められた。このときに『臨床眼科』の別冊として「桐沢教授退官記念論文集」が刊行された。

 「網膜動脈周囲炎と網膜剝離を伴う特異なブドウ膜炎について」という新疾患がこの中に報告されている。著者は浦山 晃と山田酉之である。眼底周囲部の網膜がボロボロになる変わったぶどう膜炎であり,著者らは「桐沢型ブドウ膜炎」と命名した。

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.1356 - P.1359

希望掲載欄

ページ範囲:P.1362 - P.1362

アンケート用紙

ページ範囲:P.1364 - P.1364

次号予告

ページ範囲:P.1365 - P.1365

あとがき

著者: 稲谷大

ページ範囲:P.1366 - P.1366

 地方会の講演での持ちネタにもさせていただいていますが,今年5月5日に転倒して左肩をアスファルトにぶつけ,鎖骨を折ってしまいました。ARVOから帰国したばかりだったので,時差ボケしていたのかもしれませんが,飼い犬が自宅を飛び出したのを追いかけようとして慌ててダッシュしただけで,受身もせずに肩から落ちてしまうとは,私も歳をとったものです。

 幸い折れた鎖骨のズレが小さく,保存的治療で治ることがわかりました。おそらく,この本誌が読者の皆様にお届けできる頃には完治していることでしょう。しばらく鎖骨バンドというギブスを巻いておかなければならなかったのですが,その鎖骨バンドの留め金が背中の真ん中にあって,とても1人で付け外しのできない代物なのです。これでは出張に行ったときに1人でお風呂も入れません。そこで必死で調べたところ,前側で付け外しできるように改造している1人暮らしの若者のブログをネットで見つけました。急いで,改造のための部品をアマゾンで購入して,自力で付け外しできるようにしました。整形外科の先生に見せてみると,かなりよいアイデアだと思うが,適応外使用になってしまうので,なかなかメーカーも改良版を市販化できないのでしょうとのこと。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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