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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科73巻10号

2019年10月発行

文献概要

特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著

福岡大学病院における最近10年間のアカントアメーバ角膜炎の治療成績

著者: 大塩毅1 佐伯有祐1 岡村寛能1 内尾英一1

所属機関: 1福岡大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.1291 - P.1296

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要約 目的:アカントアメーバ角膜炎(AK)は再発性炎症性疾患であり,高度の治療を要し長期入院が必要となることが多い。標準的な治療法は,抗真菌薬の局所および全身投与,消毒薬の局所投与,角膜搔爬の3者併用療法であるが,AKに対する手術適応は定まっていない。筆者らは最近10年間における当院のAK症例の薬物および手術治療の成績を報告する。

対象と方法:2008〜2018年に当院でAKと診断し,入院治療を行った22例(男性10例,女性12例)を対象とし,背景,臨床所見,治療内容および視力予後について検討した。

結果:全例がコンタクトレンズを使用しており,21例がソフトレンズ,1例がハードレンズであった。アカントアメーバは11例(50%)から分離され,残りの症例は特徴的な臨床所見から診断した。全例に局所および全身の抗真菌薬,消毒薬点眼(0.02%グルコン酸クロルヘキシジン),角膜搔爬の3者併用療法を行った。補助療法としてペンタミジンイセチオン酸塩投与を20例(91%)に施行した。これらの治療に抵抗した5例に対して,ビッグバブル法を併用した深部表層角膜移植(DALK)を全例に行い,術中・術後合併症はなかった。平均入院期間は25日であり,AKの再燃はなかった。

結論:AKに対する3者併用療法は有効と考えられる。3者併用療法に治療抵抗性の重症例には手術治療が有用であり,良好な視力予後と治療期間の短縮が得られた。

参考文献

1)石橋康久・松本雄二郎・渡辺亮子・他:Acanthamoebatic keratitisの1例—臨床像,病原体検査法及び治療についての検討.日眼会誌92:963-972,1988
2)石橋康久:最近増加するアカントアメーバ角膜炎—報告例の推移と自験例の分析.眼臨紀3:22-29,2010
3)石橋康久・本村幸子:アカントアメーバ角膜炎の臨床所見—初期から完成期まで.日本の眼科62:896-896,1991
4)石橋康久:アカントアメーバ角膜炎の治療のポイントは? あたらしい眼科26(臨増):38-43,2010
5)Bradley A, Sacher M, Wagoner K et al:Treatment of Acanthamoeba keratitis with intravenous pentamidine before therapeutic keratoplasty. Cornea 34:49-53, 2015
6)木下 茂・塩田 洋・浅利誠志・他:感染性角膜炎診療ガイドライン(第2版).日眼会誌117:467-509 2013
7)Kashiwabuchi RT, de Freitas D, Alvarenga LS et al:Corneal graft survival after therapeutic keratoplasty for Acanthamoeba keratitis. Acta Ophthalmol 86:666-669, 2008
8)Enrica S, Caterina S, Francesco S et al:Early deep anterior lamellar keratoplasty(DALK)for Acanthamoeba keratitis poorly responsive to medical treatment. Cornea 35:1-5, 2016
9)Fontana L, Parente G, Tassinari G:Clinical outcomes after deep anterior lamellar keratoplasty using the big bubble technique in patients with keratoconus. Am J Ophthalmol 143:117-124, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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