文献詳細
文献概要
特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著
トリアムシノロンアセトニドテノン囊下注射により眼球穿孔を生じた1例
著者: 谷彰浩1 香留崇1 仙波賢太郎1 三田村佳典1
所属機関: 1徳島大学大学院医歯薬学研究部眼科学分野
ページ範囲:P.1308 - P.1312
文献購入ページに移動症例:48歳,男性。前医でぶどう膜炎増悪のため27G鋭針で左眼トリアムシノロンアセトニド(TA)20mgテノン囊下注射を施行し,直後に眼痛と視力低下を自覚した。角膜上皮浮腫,眼圧上昇,硝子体腔にTAを認めたため眼球穿孔を疑われ,同日に当科を紹介され受診した。左眼視力10cm指数弁,眼圧は前房穿刺後で5mmHg,眼軸長は27.78mmであった。軽度の角膜上皮浮腫と硝子体内腔にTA,上方結膜に結膜下出血を認めた。眼底は透見不能で,超音波検査にて眼球内に塊状の異常陰影があり,網膜剝離は検出できなかった。上方強膜からの眼球穿孔,TA眼内注入と考え,同日緊急で硝子体手術を施行した。術中,眼内に塊状のTA,上方に網膜裂孔,その周囲に出血性の網膜剝離を認めた。裂孔周囲を眼内レーザーで凝固し,20% SF6ガスタンポナーデで手術を終了した。手術2週間後,左眼視力は(1.0),眼圧は11mmHgとなった。眼内TAは消失し,網膜は復位していた。
結論:テノン囊下注射は,その手技による合併症の頻度は少ないとされているが,長眼軸,鋭針の使用は眼球穿孔の危険因子となる。眼球穿孔に対しては早急な硝子体手術が有効であった。
参考文献
掲載誌情報