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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科73巻10号

2019年10月発行

文献概要

特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著

小児に発症したネコ引っ搔き病によるぶどう膜炎が疑われた1例

著者: 反田蓉子1 市川浩平1 朝岡聖子1 土至田宏1 蕪城俊克2 太田俊彦1

所属機関: 1順天堂大学医学部附属静岡病院眼科 2東京大学大学院医学系研究科眼科学教室

ページ範囲:P.1327 - P.1333

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要約 目的:ネコ引っ搔き病によるぶどう膜炎が疑われた1例の報告。

症例と方法:10歳の女児が,1か月前からの左眼後極部の漿液性網膜剝離と脈絡膜新生血管で当院を紹介され受診した。1年前から春季カタルとして某医で加療中であり,半年前に左眼黄斑部に漿液性網膜剝離が生じたが,ステロイド点眼により2か月で寛解したという。

所見と経過:初診時の矯正視力は,右1.2,左0.4であった。眼圧は正常範囲で,両眼の前眼部に非肉芽腫性角膜後面沈着物,前房水中浮遊細胞,虹彩根部の前癒着があった。左眼の黄斑部に滲出性病変,両眼に乳頭の発赤と腫脹,雪玉状の硝子体混濁があった。フルオレセイン蛍光眼底造影で両視神経乳頭の過蛍光,両網膜静脈周囲炎,眼底の滲出部位と一致する過蛍光があった。ネコに噛まれたことがあり,抗Bartonella henselae IgG値が256倍であった。以上よりネコ引っ搔き病によるぶどう膜炎が疑われ,抗菌薬内服,ステロイド点眼および内服を開始した。左眼視力は上昇したが,左眼の黄斑部滲出と両眼の静脈周囲炎は持続した。ステロイド内服をメトトレキサート内服に切り替え,視力と網膜病変の改善が得られた。

結果:ネコ引っ搔き病によると推定される小児ぶどう膜炎で,ステロイド長期内服の代替治療としてメトトレキサート内服が有効であった。

参考文献

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. Can J Ophthalmol 47:e9-e10, 2012
6)蕪城俊克:眼科におけるステロイド大量全身投与 目的,薬剤選択と投与量,投与前検査,注意すべき症例.眼科58:285-291,2016
7)日本リウマチ学会MTX診療ガイドライン策定小委員会(編):関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2016年改訂版.羊土社,東京,2016
8)Shea B, Swinden MV, Ghogomu ET et al:Folic acid and folinic aid for reducing side effects in patients receiving methotrexate for rheumatoid arthritis. J Rheumatol 41:1049-1060, 2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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