icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科73巻12号

2019年11月発行

文献概要

特集 感染性角膜炎—もうガイドラインだけでは足りない!

企画にあたって

著者: 井上幸次1

所属機関: 1鳥取大学医学部視覚病態学

ページ範囲:P.1381 - P.1381

文献購入ページに移動
 感染性角膜炎診療ガイドラインは日本眼感染症学会によって作成され,2007年に日本眼科学会雑誌に第1版が掲載され,さらに2013年に第2版が掲載された。このガイドラインはevidence-basedになっていない経験知の集積によるところが大きく,教科書的な内容も含まれており,現在のガイドラインの概念からすると,そろそろ大幅な改訂が必要という意見も出ている。ただ,感染性角膜炎は感染する微生物がさまざまで,ホストの要因もさまざまであり,その掛け算によって生じるため,きわめてvariationが多く,ケース・バイ・ケース,臨機応変に対応することがどうしても必要になってくる。ガイドラインはあくまでベースになるごく基本的なことを示したにすぎず,ガイドライン通り行うとかえってうまくいかないことさえある。また,evidenceが必ずしも役立つとは限らない一面もある。例えば,外国の論文で得られたevidenceはたとえevidenceレベルが高くても,わが国の状態には当てはまらないこともあるのである。これは感染性角膜炎の場合,国によって起炎菌や薬剤の使用方法が大きく違うからである。極論すると,感染性角膜炎はある意味ガイドラインになじまない疾患であるとさえいえる。そういう意味で,感染性角膜炎のエキスパートが現場で培った経験知は非常に重要だが,いざガイドラインを作る段になるとエキスパートの意見が一致する最大公約数的なものだけが取り上げられて,個々の優れた経験知が除かれてしまう可能性がある。第1版・第2版の感染性角膜炎診療ガイドラインを作成したときでさえ,そうだったので,今後改訂される場合,ますますそれが顕著になるであろうと思われる。

 今回,本特集を企画させていただいたのは,第2版が作成されてから間もなく7年が経つため古くなってきているので,その後に明らかになってきた新しい知見を知ってほしいという一面もあるが,どんなガイドラインを作ったとしても必ずはみ出る部分があるので,それをもっと知ってほしいというのがもう一つの大きな目的である。幸い,現在の,そしてこれからのわが国の感染性角膜炎診療を牽引していってくれる先生方に,それぞれ力のこもった原稿を執筆していただいたので,私の企画意図はかなり達成されたのではないかと思っている。読者の皆さんにとって,本特集がガイドラインを越えた優れた感染性角膜炎診療を行うための参考となれば幸いである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?