icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科73巻4号

2019年04月発行

文献概要

特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[2] 原著

顆粒状角膜ジストロフィのため治療的レーザー角膜切除術を必要とした6歳女児の1例

著者: 春木智子1 唐下千寿1 大谷史江1 小松藍子1 蔵増亜希子2 井上幸次1

所属機関: 1鳥取大学医学部視覚病態学教室 2鳥取市立病院眼科

ページ範囲:P.483 - P.489

文献購入ページに移動
要約 目的:顆粒状角膜ジストロフィは常染色体優性遺伝の進行性の疾患であるが,通常成人になって発見,治療されることが多い。今回,6歳ですでに重症の顆粒状角膜ジストロフィを呈し,治療的レーザー角膜切除術(PTK)を要した症例を経験したので報告する。

症例:6歳,女児。3歳児健診で弱視の疑いを指摘され,近医を受診し,両遠視,顆粒状角膜ジストロフィを認めた。完全矯正眼鏡にて遠視治療を開始され,4歳時に当科紹介初診となった。初診時の視力は右(0.8),左(0.7),両親は親近婚ではないが,両眼ともに顆粒状混濁を認めた。4歳という年齢を考慮し,混濁がさらに進行するまでは経過をみることとした。徐々に混濁は増強し,6歳時に視力が右(0.3),左(0.4)まで低下してきたため,全身麻酔下にて両眼PTKを施行した。PTK後の診察は疼痛のため困難であったが,3か月後には,右(0.8),左(0.8p)まで回復した。

考按:顆粒状角膜ジストロフィは通常heterozygousの状態で発症するが,稀にhomozygousとなったときは重症化し,若年発症となり,かつPTK後早期に再発することが知られている。6歳でPTKを必要とする例はきわめて珍しい。今後数年以内に再発することが予想されるが,各々の眼の治療期間を空け,可能な限り角膜移植を行う時期を遅らせるために,今後は片眼ずつのPTK治療を行っていくことを考慮している。

参考文献

1)Munuer FL, Korvatska E, Djemaï A et al:Kerato-epithelin mutation in four 5q31-linked corneal dystrophies. Nat Genet 15:247-251, 1997
gene mutation in corneal dystrophies. Human Mutation 27:615-625, 2006
遺伝子解析.JJCLA 33:828-832,2008
4)高木幹男・石津 衛・鈴木紘子:顆粒状角膜ディストロフィ(GroenouwⅠ型).眼紀22:479-484,1971
5)金井 淳・田中 稔・山口達夫・他:顆粒状角膜変性(グレノーⅠ型)の電子顕微鏡学的観察.眼紀25:591-601,1974
6)真島行彦:角膜変性症の分子遺伝学—日本人における顆粒状角膜変性症と格子状角膜変性症.臨眼52:711-715,1998
7)Okada M, Yamamoto S, Inoue Y et al:Severe corneal dystrophy phenotype caused by homozygous R124H keratoepithelin mutations. Invest Ophthalmol Vis Sci 39:1947-1953, 1998
8)井上由美子・山本修士・井上智之・他:エキシマレーザー治療的角膜切除術を施行したホモ接合性R124H Avellino角膜変性症の1例.あたらしい眼科16:1559-1562,1999
9)崎元 暢・稲田紀子・庄司 純・他:ホモ接合変異を有する顆粒状角膜ジストロフィの小児例.眼科43:1703-1707,2001
10)梅野敬子・伊東眞由美・伏見典子・他:顆粒状角膜ジストロフィに対する電気分解術.眼科41:905-909,1999
11)水流忠彦・下村嘉一・冨井 聡・他:エキシマレーザーによる表層角膜切除術の臨床成績.あたらしい眼科12:1583-1595,1995
12)藤田敬子・稗田 牧・中島伸子・他:角膜疾患に対する治療的エキシマレーザー角膜表層切除後のVF-14による自覚的視機能評価.日眼会誌109:736-740,2005
13)廣石悟朗・牛山佳子・永浜正浩・他:顆粒状角膜変性症の1家系.眼紀45:543-546,1994
14)三井正博・崎元 卓・澤 充・他:円錐角膜と顆粒状角膜ジストロフィを合併した1家系.日眼会誌100:916-919,1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?