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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科73巻5号

2019年05月発行

文献概要

特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[3] 原著

意図的巨大裂孔作成が奏効した巨大網膜囊胞を伴うアトピー性網膜剝離

著者: 西村太吾1 奥一真1 近藤寛之1

所属機関: 1産業医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.661 - P.665

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要約 目的:網膜囊胞は網膜剝離症例の0.25〜1%にみられ,若年者に好発し,進行の遅い網膜剝離に合併する難治な病態である。筆者らはアトピー性皮膚炎患者に生じた巨大網膜囊胞を伴う増殖硝子体網膜症の1例を経験した。術中OCTで囊胞を観察し,意図的巨大裂孔作成により復位を得たので報告する。

症例:アトピー性皮膚炎を有する18歳男性。右眼の視力低下のために近医で網膜剝離と診断され受診した。

所見と経過:右眼は矯正視力0.05,下方半周に3つの巨大網膜囊胞を伴う網膜剝離を認めた。白内障併施硝子体手術を行ったところ,下方に鋸状縁裂孔があり,広範な網膜下増殖組織を認めた。下方半周網膜に意図的巨大裂孔を作成し,網膜を翻転させ網膜下増殖組織を摘出した。術中OCTでは囊胞の構造を観察でき,菲薄化した内壁,風船状に突出した外壁,外壁から色素上皮につながる牽引組織を観察できた。囊胞を外層側より穿刺し囊胞内液を吸引・除去し,液体パーフルオロカーボン・シリコーンオイル置換を行った。術後網膜は復位し,囊胞の範囲は平坦化した。4か月後にシリコーンオイルを抜去し,19か月後に眼内レンズを挿入した。最終視力は0.1にとどまった。

結論:術前はOCTの撮影ができなかったが,術中OCTにより網膜の病態変化が観察できた。意図的巨大裂孔作成により網膜下増殖組織の摘出と網膜囊胞の穿刺・吸引は比較的容易となり,有効な治療法の1つと考えた。

参考文献

1)Hagler WS, North AW:Intraretinal macrocysts and retinal detachment, Trans Am Acad Ophthalmol Otolaryngol 71:442-454, 1967
2)Macus DF, Aaberg TM:Intraretinal macrocysts in retinal detachment. Arch Ophthalmol 97:1273-1275, 1992
3)石川美代・坂上 英:網膜囊胞を伴った網膜剝離症例について.日眼会誌79:389-396,1975
4)龍井哲夫・清水昊幸:網膜巨大囊胞を伴った網膜剝離について.眼臨医報79:19-23,1985
5)白井 彰・山本一喜:孤立性網膜囊胞を伴った網膜剝離の2例.眼臨医報63:119-124,1969
6)百々次夫:網膜剝離の臨床治験補遺,第3篇.鋸状縁断裂に際する網膜真性囊胞に就て.臨眼4:523-525,1950
7)Pischel DK:Surgical treatment of retinal cysts. Am J Ophthalmol 56:1-16, 1963

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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