文献詳細
文献概要
特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[3] 原著
病的近視による両眼網膜分離と片眼網膜剝離をきたした中等度近視の1例
著者: 森秀夫1
所属機関: 1大阪市立総合医療センター眼科
ページ範囲:P.667 - P.672
文献購入ページに移動要約 目的:病的近視は強膜の伸展による眼球変形が主因とされる。今回,病的近視によると思われる両眼網膜分離と右眼網膜剝離を発症した中等度近視症例を経験したので報告する。
症例:71歳,女性。1か月前からの右眼のぼやけを自覚して受診した。
所見と経過:視力は右0.07(0.4×−3.25D),左0.08(0.7×−5.00D),眼軸は右25.18mm,左25.46mmであった。両眼底は豹紋状で,光干渉断層計(OCT)にて右眼に黄斑部から上方アーケード外までの網膜剝離を認めた。左眼黄斑に異常はなかった。網脈絡膜の変性や炎症所見はなく,蛍光眼底造影は異常なかった。広範囲にOCTを再検査すると,右眼乳頭上方に網膜分離を認め,網膜剝離と連続していた。左眼にも乳頭上方から鼻側に網膜分離を認めた。1年余りの経過観察後にOCTにて右眼の網膜分離内に外層裂孔を検出し,病的近視によるものと診断して硝子体手術を施行した。網膜と強く接着した後部硝子体を人工的に剝離して血管アーケード外まで広範に内境界膜を剝離し,ガスタンポナーデを施行した。術後10か月で網膜剝離は治癒し,矯正視力は0.8に向上した。
結論:本症例は中等度近視かつ眼球伸長による網膜牽引が乳頭周囲に強かった。治療には硝子体手術が有効であった。
症例:71歳,女性。1か月前からの右眼のぼやけを自覚して受診した。
所見と経過:視力は右0.07(0.4×−3.25D),左0.08(0.7×−5.00D),眼軸は右25.18mm,左25.46mmであった。両眼底は豹紋状で,光干渉断層計(OCT)にて右眼に黄斑部から上方アーケード外までの網膜剝離を認めた。左眼黄斑に異常はなかった。網脈絡膜の変性や炎症所見はなく,蛍光眼底造影は異常なかった。広範囲にOCTを再検査すると,右眼乳頭上方に網膜分離を認め,網膜剝離と連続していた。左眼にも乳頭上方から鼻側に網膜分離を認めた。1年余りの経過観察後にOCTにて右眼の網膜分離内に外層裂孔を検出し,病的近視によるものと診断して硝子体手術を施行した。網膜と強く接着した後部硝子体を人工的に剝離して血管アーケード外まで広範に内境界膜を剝離し,ガスタンポナーデを施行した。術後10か月で網膜剝離は治癒し,矯正視力は0.8に向上した。
結論:本症例は中等度近視かつ眼球伸長による網膜牽引が乳頭周囲に強かった。治療には硝子体手術が有効であった。
参考文献
1)日本強度近視研究会:強度近視研究における現時点での理解と問題点.日眼会誌112:127-135,2008
2)Wang MK, Wu YM, Wang JP et al:Clinical characteristics of posterior staphylomas in myopic eyes with axial length shorter than 26.5 millimeters. Am J Ophthalmol 162:180-190, 2016
3)Moriyama M, Ohno-Matsui K, Hayashi K et al:Topographic analysis of shape of eyes with pathologic myopia by high-resolution three-dimensional magnetic resonance imaging. Ophthalmology 118:1626-1637, 2011
4)Shinohara K, Tanaka N, Jonas JB et al:Ultrawide-field OCT to investigate relationship between myopic macular retinoschisis and posterior staphyloma. Ophthalmology 125:1575-1586, 2018
5)生野恭司・白木暢彦・藤本聡子・他:強度近視合併症における病態の理解と治療の考え方.日眼会誌121:292-313,2017
6)Strauus O, Helbig H:The function of the retinal pigment epithelium. Adler's Physiology of the Eye. 11th ed. 325-332 Elsevier, New York, 2011
7)小林真希・松原 央・古田基靖・他:乳頭小窩のない非強度近視眼に発症した黄斑部網膜分離症の2症例.眼科58:495-504,2016
8)五月女典久・平形明人・井上 真・他:乳頭小窩黄斑症に類似した網膜分離を呈した硝子体黄斑牽引症候群の1例.あたらしい眼科25:109-113,2008
9)森 秀夫・竹村 准:小児のpit-macular症候群に対する硝子体手術の1例.眼科手術31:440-444,2018
10)Yoshitake T, Nakanishi H, Setoguchi Y et al:Bilateral papillomacular retinoschisis and macular detachment accompanied by focal lamina cribrosa defect in glaucomatous eyes. Jpn J Ophthalmol 58:435-442, 2014
11)Shimada N, Sugamoto Y, Ogawa M et al:Fovea-sparing internal limiting membrane peeling for myopic traction maculopathy. Am J Ophthalmol 154:693-701, 2012
12)Ikuno Y, Sayanagi K, Soga K et al:Foveal anatomical status and surgical results in vitrectomy for myopic foveoschisis. Jpn J Ophthalmol 52:269-276, 2008
掲載誌情報