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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科73巻7号

2019年07月発行

文献概要

特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著

後天性共同性内斜視に対する固視眼へのボツリヌス毒素投与

著者: 宇井牧子1234 折笠智美1 岡島嘉子1 今井達也1 井口聡一郎1 迫野卓士1 佐藤美紗子1 加藤徹朗1 根岸貴志4

所属機関: 1横浜労災病院眼科 2東京大学医学部眼科学教室 3国立成育医療研究センター眼科 4順天堂大学眼科学教室

ページ範囲:P.939 - P.945

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要約 緒言:後天性内斜視に対してボツリヌス毒素(BTX)療法は治療の選択肢となるが,斜視眼への投与が一般的である。麻痺性の要素のない後天性共同性内斜視(輻湊痙攣疑い含む)に対する,固視眼内直筋へのBTX注射について検討した。

対象と方法:2016年8月〜2018年8月に横浜労災病院で内直筋にBTX注射を受けた後天性共同性内斜視8例(男性7例,女性1例,平均年齢28.0±14.2歳)に対し,後ろ向きに調査した。各注射を斜視眼注射群と固視眼注射群に分け,注射1か月後の斜視角,近見立体視,眼位,頭位異常,合併症を比較した。

結果:斜視眼注射は9回,固視眼注射は10回であった。注射前斜視角は斜視眼注射群31.9±10.2Δ,固視眼注射群32.6±8.2Δで有意差はなかった(p=0.83)。注射後斜視角は斜視眼注射群5.4±9.5Δ,固視眼注射群11.6±14.2Δで有意差はなかった(p=0.41)。注射後立体視の中央値はそれぞれ100秒,40秒であった。立体視50秒以下の割合は22.2%,90%で,固視眼注射群で有意に高かった(p=0.003)。注射後の眼位について,遠見斜位の割合は55.6%,60%で有意差はなかったが(p=0.845),近見斜位の割合は55.6%,100%で固視眼注射群で有意に高かった(p=0.018)。注射後異常頭位を認めた割合は斜視眼注射群44.4%,固視眼注射群0%と固視眼注射群で有意に少なかった(p=0.018)。合併症として,一過性眼瞼下垂を斜視眼注射群44.4%,固視眼注射群30%に認めたが,有意差はなかった(p=0.515)。

結論:固視眼注射による重大な合併症はなかった。後天性共同性内斜視に対して,BTXの固視眼投与が注射後早期の立体視回復と複視消失に効果的である可能性が考えられた。

参考文献

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10)Ali MH, Berry S, Qureshi A et al:Decompensated esophoria as a benign cause of acquired esotropia. Am J Ophthalmol 194:95-100, 2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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