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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科73巻8号

2019年08月発行

文献概要

特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著

交代プリズム遮閉試験における1眼遮閉時間の検討

著者: 山川護12 佐々木翔2 溝田淳3 林孝雄23

所属機関: 1帝京大学大学院医療技術研究科視能矯正学専攻 2帝京大学医療技術学部視能矯正学科 3帝京大学医学部眼科学講座

ページ範囲:P.1013 - P.1019

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要約 目的:交代プリズム遮閉試験(APCT)の1眼遮閉時間の違いによる融像除去眼位の変化を検討した。

対象と方法:対象は,間欠性外斜視24名。方法は,完全屈折矯正下でAPCTを1眼遮閉時間1秒・2秒・3秒・4秒にてそれぞれ行い,融像除去眼位を定量した。一連の検査時間は48秒間とし,検査距離は近見33cm,遠見5mとした。それぞれの1眼遮閉時間で測定した融像除去眼位を最大斜視角と比較するため,今回は最大斜視角の測定として,40分間のプリズム順応試験(PAT)および1時間の1眼遮閉後のAPCT(1時間遮閉)を実施した。

結果:融像除去眼位の平均は,近見では1眼遮閉時間1秒で21.9±10.6Δ,2秒で21.4±8.7Δ,3秒で21.2±9.5Δ,4秒で21.0±9.3Δ,PATで29.1±10.0Δ,1時間遮閉で28.4±10.2Δであった。1眼遮閉時間1秒・2秒・3秒・4秒の間に有意差はなかったが,すべての秒数でのAPCTとPAT,すべての秒数でのAPCTと1時間遮閉の間に有意差があった。遠見では1眼遮閉時間1秒で9.5±6.9Δ,2秒で9.4±7.1Δ,3秒で9.3±6.6Δ,4秒で9.4±6.4Δ,PATで14.3±8.3Δ,1時間遮閉で12.6±6.9Δであった。近見同様に1眼遮閉時間1秒・2秒・3秒・4秒の間に有意差はなかったが,すべての秒数でのAPCTとPAT,すべての秒数でのAPCTと1時間遮閉の間に有意差があった。遠見においては,PATと1時間遮閉の間にも有意差があった。

結論:今回の間欠性外斜視24名においては,近見・遠見ともに,APCTの1眼遮閉時間を1〜4秒の間で変化させても,得られる融像除去眼位に影響を与えなかった。しかし最大斜視角の検出には,PATや1時間遮閉を実施する必要があると考えられた。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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