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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科73巻8号

2019年08月発行

文献概要

特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著

1年間放置された硝子体内鉄片異物の1例

著者: 林裕子1 馬場隆之1 海保朋未1 三浦玄1 忍足俊幸12 山本修一1

所属機関: 1千葉大学大学院医学研究院眼科学 2国際医療福祉大学病院眼科

ページ範囲:P.1067 - P.1072

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要約 目的:1年前の受傷が疑われる硝子体内鉄片異物の症例の報告。

症例:患者は14歳,男児。右眼視力低下を主訴に前医を受診し,右眼外傷性白内障の診断で当院に紹介され受診となった。初診時,右眼視力は手動弁で角膜穿孔痕と成熟白内障を認めた。1年前に金槌を扱っているときに右眼に異物が飛入したが,眼科を受診しなかった。Bモードエコーでは下方に網膜剝離が疑われ,CTで眼球下方に高吸収域を認め,硝子体内異物と診断した。網膜電図(ERG)ではb波の減弱(健眼の50%以上)や杆体・錐体応答ならびにフリッカ応答の異常を認め,眼球鉄症を発症していると考えられた。全身麻酔下に水晶体超音波乳化吸引術,硝子体手術と輪状締結術を行った。術中に鉄片異物と網膜裂孔,網膜下増殖組織を伴う増殖硝子体網膜症を認めたため,異物除去,硝子体切除後,シリコーンオイルタンポナーデを行った。3か月目にシリコーンオイル抜去と眼内レンズ挿入を行い,術後半年で右眼視力(1.2)を得た。

結論:受傷後1年以上経過した眼内異物の症例を経験した。硝子体内鉄片異物による眼球鉄症の視力予後予測にERGは重要であるが,増殖硝子体網膜症合併時にはERG所見が修飾されることがある。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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