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特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著
1年間放置された硝子体内鉄片異物の1例
著者: 林裕子1 馬場隆之1 海保朋未1 三浦玄1 忍足俊幸12 山本修一1
所属機関: 1千葉大学大学院医学研究院眼科学 2国際医療福祉大学病院眼科
ページ範囲:P.1067 - P.1072
文献購入ページに移動症例:患者は14歳,男児。右眼視力低下を主訴に前医を受診し,右眼外傷性白内障の診断で当院に紹介され受診となった。初診時,右眼視力は手動弁で角膜穿孔痕と成熟白内障を認めた。1年前に金槌を扱っているときに右眼に異物が飛入したが,眼科を受診しなかった。Bモードエコーでは下方に網膜剝離が疑われ,CTで眼球下方に高吸収域を認め,硝子体内異物と診断した。網膜電図(ERG)ではb波の減弱(健眼の50%以上)や杆体・錐体応答ならびにフリッカ応答の異常を認め,眼球鉄症を発症していると考えられた。全身麻酔下に水晶体超音波乳化吸引術,硝子体手術と輪状締結術を行った。術中に鉄片異物と網膜裂孔,網膜下増殖組織を伴う増殖硝子体網膜症を認めたため,異物除去,硝子体切除後,シリコーンオイルタンポナーデを行った。3か月目にシリコーンオイル抜去と眼内レンズ挿入を行い,術後半年で右眼視力(1.2)を得た。
結論:受傷後1年以上経過した眼内異物の症例を経験した。硝子体内鉄片異物による眼球鉄症の視力予後予測にERGは重要であるが,増殖硝子体網膜症合併時にはERG所見が修飾されることがある。
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