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臨床報告
視力低下と眼球偏位を伴ったdacryocystoceleの1例
著者: 常吉沙帆理1 大友一義1 芝原勇磨1 坪田裕喜子1 譚雪1 間山千尋1 田邉樹郎1 藤野雄次郎1
所属機関: 1JCHO東京新宿メディカルセンター眼科
ページ範囲:P.1135 - P.1140
文献購入ページに移動症例:61歳,女性。20歳台から右急性涙囊炎を繰り返し,抗菌薬投与や自身で涙囊マッサージを行い排膿することで経過観察されていた。受診2か月前から右側の顔貌の変化を周囲に指摘され近医を受診し,精査加療目的で当科を紹介され受診となった。
所見と経過:視力は右(0.6),左(1.2)で,右涙囊部の腫脹と右眼球の上耳側への偏位および突出を認めた。総涙小管は閉塞していた。眼底検査では右眼の眼底後極部に脈絡膜皺襞と脈絡膜血管の拡張を認め,CT検査とMRI検査では右眼窩内,眼球の内下方に囊胞性腫瘤を認めた。右側DCCの診断にて涙囊鼻腔吻合術を施行した。術中所見では内腔から約5mlの白色膿性粘液を排液し,涙囊内の厚い粘膜が内総涙点を覆って閉塞していた。閉塞部組織の病理検査を施行したが,悪性所見は認めなかった。術後も軽度脈絡膜皺襞は残存したが,眼球偏位は早期から改善して右視力は(1.0),通水検査も良好となった。
結論:DCCは良性疾患であるが,眼窩内に伸展した場合に眼球を機械的に圧排して,強い症状を示すことがある。CT所見やMRI所見は他疾患の鑑別と眼球への影響を評価するために有用で,本症例では早期手術により圧迫を解除することで眼球偏位や視力の改善を得ることができた。
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