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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻11号

2020年10月発行

文献概要

増刊号 すべて見せます! 患者説明・同意書マニュアル—[特別Web付録]説明書・同意書の実例99点 6 斜視弱視

小児のアトロピン点眼

著者: 杉原友佳1

所属機関: 1福井大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.80 - P.81

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検査の概要

 小児の弱視治療において,調節麻痺薬を使用して正確な屈折検査を行うことは必要不可欠である。現在,調節麻痺薬として効果が強い順に,アトロピン硫酸塩水和物点眼液(以下,アトロピン),シクロペントラート塩酸塩(以下,サイプレジン),トロピカミド点眼液,スチグミンメチル硫酸塩が使用されている。上記の点眼は,アセチルコリンと拮抗することによって副交感神経を遮断し調節麻痺作用を引き起こす。このうち調節麻痺薬として最もよく用いられているのはアトロピンとサイプレジンであるが,使用の際,アトロピンは顔面紅潮や発熱など,サイプレジンは眠気や運動失調,幻覚などの副作用を起こす可能性があることが知られている。

 アトロピンの致死量は成人100mg,小児10mgで,1%アトロピン点眼液1本5mLには50mgのアトロピンが含まれているため1),点眼処方の際には患者とその家族に対して十分な説明が必要である。散瞳作用は点眼後数分で始まり,30〜40分で最大となる。作用は7〜10日間持続する2)。添付文書では幼児・小児においては0.25%に希釈して使用することが望ましいと記載されているが,最近の調査では医師の判断のもと1%または0.5%アトロピン点眼液を処方する施設も多く,点眼回数については2回/日×7日間または2回/日×5日間で実施している施設が半数以上を占めているようである3)。実際,決められた点眼方法を厳守することで6歳以下の小児においても問題なく1%アトロピン点眼液を使用することが可能であるとの報告もある4)

参考文献

1)向野和夫:瞳孔作用薬.眼科診療プラクティス編集委員(編):眼科薬物治療ガイド.349-355,文光堂,東京,2004
2)川守田拓志:あたらしい眼科33(臨増):13-16,2016
3)若山暁美・他:日眼会誌121:529-524,2017
4)森 隆史・他:眼臨紀1:157-160,2008
5)山田昌和・他:屈折異常.小口芳久(編):小児眼科のABC.14-21,日本医事新報社,東京,2003
6)外山恵里・他:日視能訓練士協誌43:213-218,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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