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増刊号 すべて見せます! 患者説明・同意書マニュアル—[特別Web付録]説明書・同意書の実例99点 6 斜視弱視
ボツリヌス毒素注射併用斜視手術
著者: 宇井牧子12
所属機関: 1CS眼科クリニック 2東京大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.96 - P.97
文献購入ページに移動斜視に対するA型ボツリヌス毒素(botulinum toxin type A:BTX-A)治療は,わが国では2015年6月に保険適用となり,12歳以上のすべての斜視に使用できるようになった。BTX-Aは,運動神経末端でアセチルコリン放出を抑制し,神経筋伝達を阻害する。BTX-A注射によって筋の麻痺・収縮抑制を起こすこととなる。大角度の斜視に対して術中に後転術とBTX-Aを併用することで,後転術による筋の弱化効果が増強され,通常の後転術より大きな眼位矯正量を得ることができる。
BTX-A注射併用斜視手術の良い適応は,大角度の麻痺性斜視,甲状腺眼症,大角度の共同性斜視である1)。本来,BTX-A療法は注射後3〜4か月で神経末端より別の発芽が生じて筋収縮力が回復するが,筋線維の細い外眼筋では注射部位に恒久的な萎縮と線維化が生じるとの報告もある2)。BTX-A注射併用後転術を短縮術と組み合わせたり両眼後転術に加えることで,中等度以上の麻痺性斜視に対しても筋移動術を行わずに正面視で正位が得られることがあり,筋移動術による上下斜視や前眼部虚血のリスクを抑えることができる3)。
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