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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻3号

2020年03月発行

文献概要

特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[1] 原著

前房水腫瘍マーカーが原発巣の診断に有用であったS状結腸癌の虹彩毛様体転移

著者: 笠松広嗣1 京本敏行1 星山健2 柴田壮一郎3 佐々木茂4 伊藤以知郎5

所属機関: 1長野赤十字病院眼科 2信州大学医学部眼科学教室 3長野赤十字病院消化器内科 4長野赤十字病院放射線科 5長野赤十字病院病理診断科

ページ範囲:P.283 - P.289

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要約 目的:結腸癌の虹彩毛様体転移は稀である。S状結腸癌の虹彩毛様体転移の補助診断として,前房水腫瘍マーカーの測定が有用であった症例の報告。

症例:多発転移巣を伴うS状結腸癌の既往のある60歳男性が,右眼の白濁を主訴に受診し,右虹彩毛様体腫瘤を認めた。S状結腸癌の虹彩毛様体転移が疑われたが,全身状態が悪く,患者の同意が得られなかったため直接生検は行わなかった。放射線療法を施行したが効果は認められず,腫瘍は徐々に増大し,視力が低下した。35病日に患者の同意を得て,より低侵襲な検査として前房水中の腫瘍マーカーを測定したところ,CEAは553.7ng/mlと著明な上昇を認め,S状結腸癌の虹彩毛様体転移と診断した。しかし,全身状態は徐々に増悪し,39病日に不帰の転帰をとった。

所見:矯正視力は右0.7,左1.0。眼圧は右10mmHg,左12mmHgであった。細隙灯顕微鏡検査では右眼の耳側虹彩に3mm×5mm大の新生血管を伴う黄白色の腫瘤を認めた。

結論:虹彩毛様体への転移の診断と,その後の治療を選択・施行するための根拠に前房水腫瘍マーカーの測定が有用であった。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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