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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻4号

2020年04月発行

文献概要

特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[2] 原著

新潟大学病院における過去12年間の急性網膜壊死症例の検討

著者: 酒井愛1 中野里絵子1 松田英伸1 黒澤史門1 佐々木藍季子1 酒井康弘1 福地健郎1

所属機関: 1新潟大学大学院医歯学総合研究科視覚病態学分野

ページ範囲:P.421 - P.427

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要約 目的:急性網膜壊死(ARN)は高率に網膜剝離(RD)をきたし,視機能不良に至る症例が多い疾患である。RDを合併した例とRDを合併しなかった例で,臨床的経過・所見にどのような差があるのか,RDの原因となる臨床的所見や素因について比較検討した。検討には2015年の診断分類における臨床診断群も加えた。

対象と方法:対象は2006年9月〜2018年12月にARNを発症し,新潟大学医歯学総合病院眼科(当科)で初診・治療された患者20例22眼。うち確定診断群18眼,臨床診断群4眼であった。これらのうちRDを発症した例(剝離例)と発症しなかった例(非剝離例)に分け,比較検討を行った。

結果:両眼発症を20例中2例に認めた。原因ウイルスは水痘・帯状疱疹ウイルス15眼,単純ヘルペスウイルス3眼,PCR陰性4眼であった。12眼にRDを生じ,10眼はRDを生じなかった。年齢は,剝離例で50.3±18.7歳,非剝離例で69.0±16.6歳と,剝離例で有意に若年の傾向を認めた(p=0.049)。剝離例は非剝離例と比較し,有意差はなかったものの,比較的病変の範囲が狭い例が多かった(p=0.106)。剝離例と非剝離例の間の視神経乳頭所見・硝子体混濁・後部硝子体剝離の差はなかった。

結論:当科では,RD例が非剝離例と比較して有意に若年の傾向を認めた。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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