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特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[2] 原著
補償光学眼底カメラを用いた線維柱帯構造の正常眼と緑内障眼での違いの検討
著者: 森茂1 吉富文昭2 斉藤民也3
所属機関: 1森眼科内科医院 2大宰府吉富眼科 3おおのはら眼科
ページ範囲:P.451 - P.458
文献購入ページに移動対象と方法:対象は非緑内障6例12眼(52.2±21.6歳)と緑内障眼6例12眼(60.0±26.0歳)である。補償光学眼底カメラに前眼部光干渉断層計(OCT)用のアダプターを装着して線維柱帯を含む隅角部を前房側から撮影した。得られた画像を,線維柱帯表面の凸凹の程度を変動係数として定量化した。目的変数に線維柱帯の変動係数,説明変数には緑内障の有無,年齢,性別,眼内レンズ挿入の有無,眼圧,MD値,落屑症候群の有無の7因子を選択し,重回帰分析を行った。
結果:若年の非緑内障眼での線維柱帯表面は凸凹ひも状を呈し,高齢の緑内障眼での線維柱帯表面はほぼ平坦化する傾向を示した。高齢の非緑内障眼および若年の緑内障眼ではこれらの中間型を示した。線維柱帯の所見を定量化した変動係数は,若年非緑内障眼(凹凸ひも状)で高値,高齢緑内障眼(平板状)で低値を示した。重回帰分析では,緑内障眼(p<0.01)および年齢(p<0.01)が線維柱帯表面の凹凸度を有意に低下させる因子であることが示された。他の因子では有意差はなかった。
結論:補償光学眼底カメラに前眼部OCT用アダプターを組み合わせることにより,生体眼での隅角線維柱帯の微細表面構造を捉えることができた。緑内障では線維柱帯のメッシュワーク構造が破綻し,加齢変化と類似の病態をきたしている可能性がある。
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