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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻4号

2020年04月発行

文献概要

特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[2] 原著

Aggregatibacter actinomycetemcomitansに起因したと考えられる眼内炎の1例

著者: 和田清花1 木崎順一郎1 嶌嵜創平1 和田悦洋1 齋藤雄太1 小菅正太郎1 恩田秀寿1

所属機関: 1昭和大学医学部眼科学講座

ページ範囲:P.497 - P.503

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要約 目的:Aggregatibacter actinomycetemcomitansに起因したと考えられる眼内炎の症例の報告。

症例:83歳,女性。左眼の疼痛と霧視を主訴に当院を紹介され受診した。3年前に大動脈弁狭窄症に対する生体弁置換術の既往があった。初診時の視力は右0.7,左10cm指数弁であった。左眼には前房蓄膿を伴う強い前房内炎症を認め,眼底は透見不能であった。血液検査では,炎症反応上昇と未指摘のHbA1c高値を認めた。血液培養よりA. actinomycetemcomitansが検出された。左眼の内因性細菌性眼内炎を疑い,メロペネムの点滴静注,バンコマイシンとセフタジジムの硝子体内注射を施行した。超音波検査で眼底に隆起性病変が出現したため,硝子体手術を施行した。硝子体混濁を除去すると,眼底に白色隆起病変を認めた。硝子体細胞診および培養は陰性であった。術後,徐々に炎症は軽快した。全身検査では,明らかな感染源は特定できなかった。その後も炎症の再燃はなく,隆起性病変は徐々に平坦化した。術後約8か月で左眼視力は0.8まで回復した。

結論:A. actinomycetemcomitansを内因性細菌性眼内炎の起因菌の1つとして考慮する必要がある。本菌は口腔内常在菌であり,内因性眼内炎の原発巣を特定できない場合,歯科領域の感染症も考慮する必要がある。

参考文献

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3)宮武邦夫・赤石 誠・川副浩平・他:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン.Circ J 67 supl:1039-1082,2003
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9)Moradi P, Roberton B, Osborne R et al:HACEK endocarditis causing endogenous endophthalmitis and a metastatic abscess. Eye 20:254-255, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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