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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻6号

2020年06月発行

文献概要

連載 Clinical Challenge・3

片眼の視神経炎と診断された症例

著者: 中澤祐則1 斎藤司朗1 坂本泰二1

所属機関: 1鹿児島大学医学部眼科

ページ範囲:P.658 - P.661

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症例

患者:45歳,男性

主訴:左眼の視力障害

既往歴:特記すべきものなし

経過:突然発症した左眼の視力障害の症例。眼痛はなかった。初診時所見は,視力は右1.2(矯正不能),左手動弁(矯正不能)。眼圧は両眼ともに12mmHgであった。左眼に相対的瞳孔求心路障害(relative afferent pupillary defect:RAPD)を認めた。前眼部および中間透光体には,両眼とも特記すべき所見はなかった。左眼底にも特記すべき所見はなかった(図1)。乳頭の発赤や腫脹,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)所見においても乳頭周囲網膜神経線維層の肥厚は認めなかった。副鼻腔炎など,視神経に影響を及ぼしうる所見もなかった。

 中心フリッカ値は,右は42Hzで正常,左は10〜15Hzであった。視野は,右は正常,左視野は一部に残存するものの大幅な視野欠損がみられた(図2)。頭部および眼窩部のMRIを施行したが,眼窩部に病変と関連すると思われる異常所見はなかった。レーベル遺伝性視神経症の遺伝子検査は陰性であった。血清抗アクアポリン4抗体検査も陰性であった。

 原因不明の視神経障害と考え,患者と相談のうえでステロイドパルス療法を行った。治療3日目から視力が改善し,3週間目には左視力が(0.8)に改善し,視野障害も明らかに改善した。左視神経はやや蒼白色調になったが,中心フリッカ値も20Hzに改善した。

 その後,定期的に経過を観察していたが,発症から半年後に再び左眼の視力障害を訴えた。そのときの視力は,右1.2(矯正不能),左手動弁(矯正不能)であった。前回と同じようにステロイドパルス療法を行ったが,視力の改善は得られなかった。以後,半年に1回程度の経過観察を続けてきた。視力は右1.2(矯正不能),左手動弁(矯正不能)のままであったが,視神経の色調は次第に蒼白化してきた。6年間は変化がなかったが,その頃から左網膜静脈の拡張蛇行がみられるようになった(図3)。自覚症状には変化がなかったが,さらに3か月後,左乳頭に軽度の出血が出現した(図4)。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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