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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻6号

2020年06月発行

文献概要

特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[4] 原著

和歌山県立医科大学附属病院におけるTS-1®による涙道閉塞の涙管チューブ挿入術の手術成績について

著者: 佐々木秀一朗1 小門正英1 高田幸尚1 雑賀司珠也1

所属機関: 1和歌山県立医科大学眼科学講座

ページ範囲:P.765 - P.769

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要約 目的:和歌山県立医科大学附属病院(当院)におけるテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合カプセル剤(TS-1®)内服後の涙道閉塞,狭窄に対する涙道内視鏡下涙管チューブ挿入術の術後成績についての検討を行った。

対象と方法:2013年1月〜2018年12月に,当院にて涙道閉塞に対し涙道内視鏡下涙管シリコーンチューブ挿入術を施行したTS-1®内服歴のある10例18側(男性10例,女性0例)を対象とした。チューブ抜去はTS-1®内服終了例は手術2か月後,TS-1®内服中では内服終了2か月後で行った。

結果:閉塞部位は涙小管狭窄6側,涙小管閉塞5側,涙点閉鎖+涙小管閉塞4側,総涙小管閉塞1側,鼻涙管閉塞1側,総涙小管閉塞+鼻涙管閉塞1側であった。留置完了率は挿入不可が18側中4側あり,涙小管閉塞例では矢部・鈴木分類Grade 3群の留置率が有意に低かった。TS-1®内服開始から手術までの期間と留置不成功率は正の相関があり,内服開始から手術施行までの期間が長いほど不成功率が高くなった。チューブ抜去6か月後での流涙改善率は,上下涙点とも留置できた例では9側中8側で流涙が改善した。すべての症例で再閉塞はなかった。

結論:涙小管閉塞部位の長い症例,およびTS-1®内服開始から手術までの期間が長い症例で留置完了率が不良であると考えられる。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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