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特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著
網膜動脈閉塞症を契機に診断に至った感染性心内膜炎の1例
著者: 冨田晃生1 鎌尾浩行1 小野貴暁1 家木良彰1 三木淳司12 桐生純一1
所属機関: 1川崎医科大学眼科学教室1 2川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科
ページ範囲:P.839 - P.845
文献購入ページに移動症例:67歳,男性。2019年4月中旬の深夜に右眼上方視野異常を自覚し,近医にて網膜動脈分枝閉塞症(BRAO)と診断され当院を受診した。初診時の矯正視力は右0.9,左1.5。右眼の眼底は下半側の網膜が白濁し,ロート斑を全象限に認めた。光干渉断層計にて白濁した網膜に一致した網膜内層の肥厚と輝度の上昇を呈していたため,BRAOと診断した。全身所見として,2か月以上続く不明熱(38.6℃),白血球数13,260/μl(好中球86.2%),CRP 3.84mg/dlと全身性炎症反応が上昇していた。このため全身精査したところ,僧帽弁閉鎖不全症と疣贅を伴う感染性心内膜炎を認めたため,抗菌薬静脈内投与と僧帽弁形成術を施行した。治療開始7日後に硝子体出血を認めたが,経過観察にて出血は吸収され,治療開始5か月後に右眼矯正視力は1.0となり,全身状態とともに回復した。
結論:感染性心内膜炎を伴う網膜動脈閉塞症の症例を経験した。生命にかかわる全身性疾患が網膜動脈閉塞症の原因となる可能性があるため,十分な病歴聴取と全身精査を行う必要がある。
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