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特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著
過去3年間に入院を要した角膜潰瘍例の検討
著者: 土至田宏1 松崎有修1 東千晶1 反田蓉子1 朝岡聖子1 市川浩平1 林雄介1 杉田丈夫1 太田俊彦1
所属機関: 1順天堂大学医学部附属静岡病院眼科
ページ範囲:P.887 - P.891
文献購入ページに移動対象と方法:2016年4月〜2019年3月の角膜潰瘍入院例を対象に,誘因,検出菌,観血的治療の有無,入院日数,視力予後などについてレトロスペクティブに検討した。
結果:平均年齢は73.6±16.1歳〔20〜93(標準偏差)歳〕で,男性19例,女性19例であった。誘因として考えられたものは糖尿病が10例と最も多い一方,コンタクトレンズ装用は1例であった。菌検出率は37眼中10眼(27.0%)であった。角膜穿孔発症例は7例(18.4%)に認めた。観血的治療を要した例(手術群)と要さなかった例(非手術群)は,ともに38例中19例(50.0%)ずつであったが,透析患者は4例全例が手術群で,うち3例は糖尿病腎症によるものであった。平均入院日数は非手術群の14.1±9.3日に対して,手術群は23.6±15.6日と,統計学的に有意に長かった(unpaired t-test,p=0.029)。最終視力が0.01未満の視力予後不良例は,両群間に差がなかった。
結論:当院周辺には中核病院が少なく重症例の紹介が多いためか,観血的治療の有無にかかわらず視力予後不良例が多かった。糖尿病および透析は角膜潰瘍発症および重症化のリスクファクターと思われた。高齢の症例が多く,高齢化社会の日本の現状が浮き彫りになりつつあると思われた。
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