icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻7号

2020年07月発行

文献概要

特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著

両側の眼窩先端部症候群を呈したANCA関連血管炎の1例

著者: 秋光純一郎12 小山雄太1 曽我部由香3 藤村貴志2 鈴間潔1

所属機関: 1香川大学医学部眼科学講座 2JCHOりつりん病院眼科 3三豊総合病院眼科

ページ範囲:P.899 - P.905

文献購入ページに移動
要約 目的:抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎に生じた両側の眼窩先端部症候群の症例報告。

症例:78歳女性,前医内科にてANCA関連血管炎の治療中,右眼の視力障害を自覚した。前医眼科にて視神経炎として治療されるも増悪し,構音障害,嚥下障害も出現したため香川大学医学部附属病院眼科へ紹介となった。当科初診時の視力は右光覚なし,左(0.6),右相対的瞳孔求心路障害は陽性であった。右眼瞼下垂,右眼の全眼球運動障害と,左眼の軽度の内転制限を認めた。両眼視神経乳頭に腫脹はなかった。頭部造影MRIで右の眼球直後と先端部の視神経周囲に造影効果があり,両側の眼窩先端部と側頭葉先端部に硬膜の肥厚と造影効果を認めた。ANCA関連血管炎に併発した肥厚性硬膜炎による眼窩先端部症候群と診断した。ステロイドパルス療法2クール後の視力は右(0.2)に改善,シクロホスファミドパルス3クールを追加し眼球運動障害も消失した。治療開始90日目に視力右(0.03)と再燃した。ステロイドパルス,シクロホスファミドパルス各1クールを追加したところ,視力右(0.5)に改善した。その後は再燃なく徐々に改善し,160日後の現在,視力は右(0.9),左(1.0)と再燃前以上の視力を維持できている。

結論:ANCA関連血管炎に伴った肥厚性硬膜炎による両側の眼窩先端部症候群を経験した。右眼の光覚を消失するほど視機能障害が重篤であったにもかかわらず,治療により良好な改善を認めた。

参考文献

1)二宮高洋・檜森紀子・吉田清香・他:東北大学における眼窩先端部症候群19例の検討.神経眼科36:404-409,2019
2)下島恭弘:ANCA関連疾患と肥厚性硬膜炎.脳神経内科91:352-360,2019
3)厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班:診断へのアプローチ:ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017.71-77,診断と治療社,東京,2017
4)Watts R, Lane S, Hanslik T et al:Development and validation of a consensus methodology for the classification of the ANCA-associated vasculitides and polyarteritis nodosa for epidemiological studies. Ann Rheum Dis 66:222-227, 2007
5)勇亜衣子・河内 泉:肥厚性硬膜炎の歴史と概念—新たな診断基準.脳神経内科91:340-351,2019
6)Yonekawa T, Murai H, Utsuki S et al:A nationwide survey of hypertrophic pachymeningitis in Japan. J Neurol Neurosurg Psychiatry 85:732-739, 2014
7)Dutton JJ, Waldrop TG:Cavernous sinus. In:Dutton JJ(ed):Atlas of Clinical and Surgical Orbital Anatomy. 2nd ed. 7. Elsevier. Amsterdam, 2011
8)Dutton JJ, Waldrop TG:Orbital nerve. In:Dutton JJ(ed):Atlas of Clinical and Surgical Orbital Anatomy. 2nd ed. 52. Elsevier. Amsterdam, 2011
9)敷島敬悟:視神経.大鹿哲郎(編):専門医のための眼科診療クオリファイ30 眼の発生と解剖・機能.356-360,中山書店,東京,2016
10)本田真也・神田 隆:ANCA関連血管炎;専門領域の視点から.神経内科.日本臨牀76:339-343,2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?