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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻7号

2020年07月発行

文献概要

特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著

災害等の停電時における眼科診療—電気自動車の電源の利用

著者: 田川考作1 河崎一夫2

所属機関: 1小矢部たがわ眼科 2神通眼科クリニック

ページ範囲:P.913 - P.918

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要約 目的:災害等の停電時に眼科器械へ給電するための発電機には騒音や排気ガス中毒,蓄電池には給電時間が短いなどの欠点がある。そこで,電気自動車(PHEV)の外部給電機能を利用する方法を試みた。

対象と方法:アウトランダーPHEV(三菱自動車)は,容量約14kWhの蓄電機能とガソリンを使用した発電機能を併せもつ。車外の100Vの電気機器に対し,消費電力の合計が1,500W以下なら最長約80時間PHEVから給電できる。PHEV車内の給電口から市販の延長コードを使用するのみで眼科器械へそれぞれ単独に接続し,器械ごとに給電され作動するかを検討した。さらに,PHEVから複数の眼科器械へ一度に同時に接続し眼科診療を試みた。

結果:細隙灯顕微鏡(消費電力の目安は50W),眼底倒像鏡(50W),オートレフ・ケラトメータ(70W),眼圧計(70W),電動光学台(150W),電動椅子(200W),YAGレーザー(500W),レセプトコンピュータ(400W),超音波白内障手術器械(400〜500W),手術顕微鏡(400〜700W)および手術ベッド(400W)は,それぞれ単独で接続した状態で起動し作動した。レセプトコンピュータ,細隙灯顕微鏡,電動椅子,眼底倒像鏡および眼圧計へ一度に同時に接続した状態で2時間の診療が行えた。その際,レセプトコンピュータのプリンターおよび細隙灯顕微鏡の上下移動は消費電力が大きいため使用しなかった。蓄電容量は全容量の約1/10を消費しただけであった。オートレフ・ケラトメータと眼圧計への供給電圧を100Vから70Vまで低下させても,測定値には差はほとんどなかった。

結論:停電時にPHEVの給電機能を利用した眼科診療は可能であるが,一度に使用できる消費電力(1,500W)に制限がある。解決法として,PHEVと診療所の間にV2Hシステムの設置もしくはPHEVの複数台利用が考えられる。

参考文献

1)出口 宝・田名 毅・玉城信光・他:PHV・EVによる医療機器への電源供給—災害時における非常用電源としての実用性の検証.日医雑誌147:543-549,2018
2)加部 俊:電気自動車の災害時利用.電気設備学会誌38:546-550,2018
3)高田至朗・鋤田泰子・中尾真紀:新潟県中越地震における病院ライフラインの被害と分析.神戸大学都市安全研究センター研究報告9:377-390,2005
4)災害対策委員会:発災亜急性期(発災後4〜30日間)の対応:大規模災害ハンドブック.日本眼科医会,東京,2019
5)大嶋輝夫:電気の品質に心配事あり.停電が一番わかる.174-176,技術評論社,東京,2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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