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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻8号

2020年08月発行

文献概要

特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著

佐賀大学における真菌性鼻性視神経症の検討

著者: 吉川彩1 三根正1 江内田寛1

所属機関: 1佐賀大学医学部眼科学講座

ページ範囲:P.977 - P.984

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要約 目的:佐賀大学医学部附属病院(当院)において最近経験した鼻性視神経症の症例の原因と経過について検討する。

対象と方法:2012年4月〜2019年3月に当院で真菌性鼻性視神経症に対して加療を行い,3か月以上経過観察できた4例を後ろ向きに検討した。3例が片眼性,1例が両眼性で,男性1例・女性3例,初診時平均年齢は71.0±16.0歳,平均経過観察期間は17.5±10.4か月であった。既往歴としてステロイド投与が3例,副鼻腔炎手術が1例にあった。

結果:初診時の矯正視力は0.03が1例,手動弁が1例,光覚なしが2例で,視力低下の自覚は2週間前〜3か月前であった。MRIで全例で鼻性視神経症が疑われたが,1例は明らかな骨破壊像はなかった。当院耳鼻咽喉科にて全例で内視鏡下副鼻腔手術を行い,いずれも切除病変の病理検査でアスペルギルス症と診断された。手術前後より抗真菌薬投与を行ったものの,最終視力は全例で光覚なしと不良であった。

結論:近年,免疫抑制薬や抗腫瘍薬の汎用に伴い,副鼻腔真菌症が増加傾向である。中枢神経系への浸潤は生命予後も不良となるため,眼痛を伴う著明な視力低下を認めた場合は,本症も念頭に早急な画像検査や耳鼻科診察が必要である。

参考文献

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12)上野亜佐子・濱野忠則・藤井明弘・他:中枢神経系浸潤を示した浸潤性副鼻腔アスペルギルス症の2例—voriconazoleの効果と血管病変について.臨神経49:468-473,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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