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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻8号

2020年08月発行

文献概要

特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著

遺伝子検査により遺伝性の網膜色素変性と難聴が確認されたアッシャー症候群疑いの1例

著者: 竹下明宏1 坂本士郎1 大上麻由里23 中川喜博1 鈴木崇弘1 鈴木康之1 宇佐美真一4 西尾信哉4

所属機関: 1東海大学医学部専門診療学系眼科学 2東海大学医学部専門診療学系耳鼻咽喉科学 3宗教法人寒川神社寒川病院耳鼻咽喉科 4信州大医学部専門診療学系耳鼻咽喉科学

ページ範囲:P.1003 - P.1010

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要約 目的:アッシャー症候群は,網膜色素変性症に両側の感音難聴を伴う常染色体劣性遺伝の疾患である。筆者らは,網膜色素変性症に加え先天性難聴を患っているアッシャー症候群疑いの三兄弟の遺伝子検査を施行し,アッシャー症候群が否定された症例を経験したので報告する。

症例:患者は同胞3人(12歳の長男,9歳の長女,6歳の次女)。長男は幼少期から難聴と視野狭窄の訴えがあった。長女はすでに網膜色素変性症の診断をされており,次女にも難聴があることから,この三兄弟がアッシャー症候群を疑われた。前医で網膜色素変性症に関する遺伝子検査を,転居後に当院で難聴に関する遺伝子検査,アッシャー症候群にかかわる遺伝子検査を施行した。

結果:長男は常染色体優性遺伝の網膜色素変性症の原因遺伝子PRPF31が陽性であった。また遺伝性難聴の原因遺伝子である常染色体劣性遺伝のGJB2も検出され,母と長男と次女はGJB2T86R)を,長男,長女および次女はGJB2235delC)が陽性であった。このことより遺伝性の網膜色素変性と遺伝性の感音難聴を合併していたことが判明した。遅れてアッシャー症候群にかかわる遺伝子検査も陰性であることが判明した。

結論:臨床的にアッシャー症候群が疑われたが,遺伝子検査の結果,アッシャー症候群は否定され,遺伝性網膜色素変性と難聴の合併が確認された1家系を経験した。

参考文献

1)大鳥利文・法貫 隆・越智信行・他:Usher症候群についての眼科的研究.臨眼32:423-430,1978
2)西尾信哉・宇佐美真一:アッシャー症候群の特徴と診断基準.新薬と臨牀66:690-695,2017
3)Mathur P, Yang J:Usher syndrome:hearing loss, retinal degeneration and associated abnormalities. Biochim Biophys Acta 1852:406-420, 2015
4)Vithana EN, Abu-Safieh L, Pelosini L et al:Expression of PRPF31 mRNA in patients with autosomal dominant retinitis pigmentosa:a molecular clue for incomplete penetrans. Invest Ophthalmol Vis Sci 44:4204-4209, 2003
5)Kurata K, Hosono K, Hotta Y:Longterm clinical course of 2 Japanese patients with PRPF31-related retinitis pigmentosa. Jpn J Ophthalmol 62:186-193, 2018
6)宇佐美真一:難聴の遺伝子診断(総説).日本臨牀69:357-367,2011
7)北尻真一郎・谷口美玲・西尾信哉・他:常染色体劣性遺伝形式をとるGJB2遺伝子変異の日本人における保因者頻度.Otol Jpn 26:622,2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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