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特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著
破砕した眼鏡レンズ破片による複雑な穿孔性角膜外傷を生じた1例
著者: 吉田健也1 浅野泰彦2 岩渕成祐1 平野彩1 西崎理恵1 砂川珠輝1 上條由美1 恩田秀寿2
所属機関: 1昭和大学江東豊洲病院眼科 2昭和大学医学部眼科学講座
ページ範囲:P.1011 - P.1016
文献購入ページに移動症例:55歳,女性。自転車で転倒し右眼を強打して救急搬送された。初診時視力は右光覚弁,左0.1(1.2×−3.50D)。右眼圧測定不能。右眼のガラス製眼鏡レンズが破損しレンズ破片が眼内に飛入した。右眼角膜はフラップ様の裂傷を生じ,実質間に細かく破砕した多数のガラス片が挟まっていた。瞳孔領下方には角膜穿孔創があり虹彩脱出を認めた。同日全身麻酔下でガラス片摘出と角膜縫合術を施行した。術後2日目より前房は形成され,以後感染徴候なく経過し,術後2,6か月目に角膜抜糸を行った。眼底には明らかな異常はないが,外傷性白内障を生じてきたため術後9か月目に水晶体再建術を施行した。術後12か月目現在では右視力(0.3),角膜内皮細胞密度1,036個/mm2で経過している。
結論:本例は複雑な形状の角膜裂傷で実質に及ぶ創は広範囲であったが,全層を貫く創は一部で,角膜内皮細胞密度がある程度保たれていたため透明化が得られた可能性が考えられた。水晶体再建術にあたっては視認性確保のための瞳孔管理と角膜内皮保護が重要であった。ガラス製眼鏡レンズは破損した際に破砕する可能性があり,複雑な形状の角膜裂傷を生じ得るので眼鏡処方の際は十分な説明と注意が必要であると考えられた。
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