icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻9号

2020年09月発行

臨床報告

外傷性の眼窩内骨膜下血腫に対して手術を行い視力改善した1例

著者: 武田莉沙1 石戸岳仁1 渕野恭子1 小島一樹1 藤井晶子2 井上克洋1

所属機関: 1藤沢市民病院眼科 2藤沢市民病院形成外科

ページ範囲:P.1097 - P.1102

文献概要

要約 目的:眼窩内骨膜下血腫は比較的稀な疾患であり,重篤な場合に視力低下をきたすことがある。手術により視力改善が得られた症例について報告する。

症例:17歳,男性。兄弟喧嘩で左眼窩部を受傷した。初診時の左眼視力は(1.2),左眼圧47mmHgと高値であった。薬物治療により翌日には左眼圧28mmHgに降圧されたが,4日後に左眼窩内骨膜下血腫が増大し,左眼視力は0.01(矯正不能)に低下した。眼窩内骨膜下血腫による圧迫性視神経症と診断し,緊急で眼窩内血腫洗浄ドレナージ術を施行した。術後翌日,左眼視力は0.1(矯正不能)に改善された。術後3日目には左眼視力0.7(矯正不能)とさらに改善がみられ,頭部CTでは術後眼窩内骨膜下血腫は著明に改善した。

結論:治療は観血的治療と保存的治療があるが,網膜や視神経に不可逆的な循環障害を生じると,血腫を除去しても視力予後が不良な場合がある。そのため,眼窩内骨膜下血腫がみられた場合,慎重に視力検査や眼底診察を行い,頭部CTや頭部MRIで血腫の大きさを評価することで観血的治療を行うタイミングを逃さないことが肝要であると考えられた。

参考文献

1)大守 誠・平山泰樹・林 知子:保存的治療で治癒した眼窩上壁骨膜下血腫の1例.日形会誌38:615-621,2018
2)福岡久邦・海沼和幸・岡部真理子・他:血腫除去を必要とした眼窩骨膜下血腫の1例.耳鼻咽喉科・頭頸部外科83:793-797,2011
3)Wolter JR:Subperiosteal hematomas of the orbit in young males:a serious complication of trauma or surgery in the eye region. Trans Am Ophthalmol Soc 77:104-120, 1979
4)中嶋順子・石村博美:自然発症した眼窩内血腫の1症例.臨眼53:1347-1350,1999
5)吉田晶子・原 敏・玉井 信:保存的治療で寛解した外傷性眼窩内骨膜下血腫の1例.臨眼42:1079-1081,1988
6)奥野高司・澤田 達・山谷珠美・他:自然寛解した眼窩内硬膜下血腫の1例.臨眼59:2011-2014,2005
7)津田 聡・中村政彦・土井 洋・他:外傷性眼窩内血腫に対し経皮的眼窩内血腫除去術を行った1例.臨眼65:1143-1148,2011
8)Pope-Pegram LD, Hamill MB:Post-traumatic subgaleal hematoma with subperiosteal orbital extension. Surv Ophthalmol 30:258-262, 1986
9)宮崎亜希・中尾陽子・田中ともえ・他:眼窩内血腫の2例.臨眼58:1951-1955,2004
10)平野佳男・松永紀子:急激な視力低下をきたした貧血による眼窩内血腫の1例.臨眼56:1089-1093,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら