icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻9号

2020年09月発行

文献概要

特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著

片側顔面痙攣に対するA型ボツリヌス毒素の硝子体腔誤投与の1例

著者: 横塚奈央1 永田万由美1 松島博之1 妹尾正1

所属機関: 1獨協医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.1103 - P.1108

文献購入ページに移動
要約 目的:片側顔面痙攣に対しA型ボツリヌス毒素(BTX-A)注射を施行した際,誤って角膜水晶体を穿通し,硝子体腔へBTX-Aが注入された可能性のある症例の報告。

症例:71歳の女性が近医内科で左片側顔面痙攣に対しBTX-A注射を施行された。注射直後より左眼の霧視を自覚し,同内科より当院を紹介され受診した。初診時視力は左(0.8),眼圧は16mmHgであった。角膜穿孔創,前囊亀裂,前囊下混濁白内障を認め,眼底は透見困難であった。前眼部光干渉断層計でも角膜穿孔創と前囊亀裂が確認され,BTX-A注射針による外傷性白内障と判断し,水晶体再建術を施行した。超音波水晶体乳化吸引術中,後囊破損および破損部直下の硝子体腔に浮遊する白色の硝子体混濁を認めた。BTX-A注射針が水晶体を貫通し硝子体腔まで穿孔し,さらに薬液が注入された可能性があると判断し,同時に硝子体切除術も施行した。術中網膜に裂傷は認めなかった。術後矯正視力は(1.2)まで改善し,術後の網膜電図においても異常所見はなかった。

結論:眼瞼痙攣や片側顔面痙攣に対するA型ボツリヌス毒素の眼瞼注射は,眼科医以外の医師によって施行される場合があるが,施行方法を誤ると重篤な合併症を引き起こす可能性がある。安全で確実な手技習得の必要性や,眼球穿孔の危険性について啓発していく必要がある。

参考文献

1)日本神経眼科学会眼瞼痙攣診療ガイドライン委員会:眼瞼けいれん診療ガイドライン.日眼会誌115:617-628,2011
2)Lee DH, Han J, Han SH et al:Vitreous hemorrhage and rhegmatogenous retinal detachment that developed after botulinum toxin injection to the extraocular muscle:case report. BMC Ophthalmol 17:249, 2017
3)Pehere N, Jalali S, Mathai A et al:Inadvertent intraocular injection of botulinum toxin A. J Pediatr Ophthalmol Strabismus 48 Online:e1-e3, 2011
4)Liu M, Lee HC, Hertle RW et al:Retinal detachment from inadvertent intraocular injection of botulinum toxin A. Am J Ophthalmol 137:201-202, 2004
5)Agrawal S, Singh V, Gupta SK et al:Vitreous hemorrhage following inadvertent intra-ocular injection of botulinum toxin. Oman J Ophthalmol 8:79-80, 2015
6)Mohan M, Fleck BW:Globe perforation during botulinum toxin injection. Br J Ophthalmol 83:503-504, 1999
7)Leung AK, Keyhani K, Ashenhurst M et al:Retinal tear and raised intraocular pressure following unintentional intraocular botulinum toxin type A injection. Can J Ophthalmol 42:746-747, 2007
8)趙 晃国・大杉秀治・裴 高一・他:ボツリヌスA型毒素の眼瞼注射後に生じた眼内炎の一例.眼臨医報101:1001-1003,2007
9)目崎高広・林 明人・中瀬浩史・他:Botulinum toxin治療の手技に関する実態調査.神経治療23:425-431,2006
10)Li S, Mizota A, Adachi-Usami E:Effects of intravitreal injection of botulinum toxin on the electroretinogram of rats. Ophthalmic Res 31:392-398, 1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら