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特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著
片側顔面痙攣に対するA型ボツリヌス毒素の硝子体腔誤投与の1例
著者: 横塚奈央1 永田万由美1 松島博之1 妹尾正1
所属機関: 1獨協医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.1103 - P.1108
文献購入ページに移動症例:71歳の女性が近医内科で左片側顔面痙攣に対しBTX-A注射を施行された。注射直後より左眼の霧視を自覚し,同内科より当院を紹介され受診した。初診時視力は左(0.8),眼圧は16mmHgであった。角膜穿孔創,前囊亀裂,前囊下混濁白内障を認め,眼底は透見困難であった。前眼部光干渉断層計でも角膜穿孔創と前囊亀裂が確認され,BTX-A注射針による外傷性白内障と判断し,水晶体再建術を施行した。超音波水晶体乳化吸引術中,後囊破損および破損部直下の硝子体腔に浮遊する白色の硝子体混濁を認めた。BTX-A注射針が水晶体を貫通し硝子体腔まで穿孔し,さらに薬液が注入された可能性があると判断し,同時に硝子体切除術も施行した。術中網膜に裂傷は認めなかった。術後矯正視力は(1.2)まで改善し,術後の網膜電図においても異常所見はなかった。
結論:眼瞼痙攣や片側顔面痙攣に対するA型ボツリヌス毒素の眼瞼注射は,眼科医以外の医師によって施行される場合があるが,施行方法を誤ると重篤な合併症を引き起こす可能性がある。安全で確実な手技習得の必要性や,眼球穿孔の危険性について啓発していく必要がある。
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