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特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著
円形の難治性角膜潰瘍を呈しreal-time PCRで診断できた角膜ヘルペスの1例
著者: 森尾倫子1 宮﨑大2 井上幸次2 清水由美子2 三木統夫3
所属機関: 1鳥取県立中央病院眼科 2鳥取大学医学部視覚病態学分野 3三木眼科
ページ範囲:P.1115 - P.1119
文献購入ページに移動症例:86歳,男性。角膜ヘルペスの既往なし。左眼は複数回の緑内障手術歴があり,視機能は不良で,201X年秋頃より水疱性角膜症を呈し,ステロイド点眼を使用されていた。翌年1月頃より左眼の眼痛と視力低下があり,2月に角膜潰瘍を指摘された。細菌性としてモキシフロキサシン塩酸塩点眼とトブラマイシン点眼で治療されたが改善せず,4月に鳥取大学医学部附属病院眼科を紹介され受診となった。初診時,左眼の角膜中央に4mm×5mm大の淡い浸潤と同部位に一致して円形の上皮欠損を認め,前房蓄膿も伴っていた。初診時の角膜擦過物からreal-time PCRで240万コピーと多量のHSV-DNAが検出されたため,角膜ヘルペスと診断できた。アシクロビル眼軟膏のみで治療したところ,2週間ほどで角膜潰瘍は改善した。
結論:本症例は,臨床所見のみからは角膜ヘルペスとは考えられず,念のため行ったreal-time PCRが診断に非常に有用であった。抗菌薬治療に抵抗する角膜潰瘍を診察した場合は,特徴的な所見を呈していなくとも,角膜ヘルペスを鑑別に挙げる必要がある。
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