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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科74巻9号

2020年09月発行

文献概要

特集 第73回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著

Spontaneous hyphemaを生じた小児の1例

著者: 吉見翔太1 小菅正太郎1 和田悦洋1 和田清花1 嶌嵜創平1 木崎順一郎1 齋藤雄太1 恩田秀寿1

所属機関: 1昭和大学医学部眼科学講座

ページ範囲:P.1145 - P.1149

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要約 目的:明確な外的誘因がなく発症する前房出血はspontaneous hyphemaと呼称される。今回,外傷や手術侵襲などの既往がなく前房出血を生じた小児の症例を経験したので報告する。

症例:7歳,男児。右結膜充血と突然の眼痛を自覚し,近医を受診した。右前房出血の診断で,精査加療目的で当院を紹介され受診となった。初診時の右矯正視力は光覚なし,右眼圧は60mmHgであった。右前眼部所見上,前房内を出血が充満し,瞳孔および虹彩紋理は透見不能であった。外傷歴はなく,家庭環境も良好であり,四肢体幹に外傷痕がないため虐待の可能性は否定的であった。全身検査でも出血性素因などの異常はなかった。入院にて,安静・薬物加療を行うも,出血の消退および眼圧の下降が得られなかったため,入院3日後に前房内血腫除去術を施行した。術後角膜染血症などの合併症はなく,右矯正視力は1.2まで改善し,前房出血の再発もなかった。

結論:小児に発生したspontaneous hyphemaでは,早期に前房内血腫除去術を施行したことで不可逆的障害を残さず,良好な視力を得ることができた。

参考文献

1)石崎典彦・米本由美子・山田哉子・他:眼内レンズ偏位をきたしたspontaneous hyphemaの1例.眼科手術31:455-459,2018
2)Swan KC:Hyhema due to wound vascularization after cataract extraction. Arch Ophthalmol 89:87-90, 1973
3)Harris LS, Galin MA:Delayed spontaneous hyphema following successful sclerotomy with cautery in three patients. Am J Ophthalmol 72:458-459, 1971
4)Wang JC, Hymowitz MB:A 45-year-old man with spontaneous hyphema of the right eye. Digit J Ophthalmol 23:78-80, 2017
5)Nunziata BR:Idiopathic bilateral spontaneous hyphemas. Ann Ophthalmol 22:472-474, 1990
6)Sharma V, Vishwanath M:Spontaneous hyphaema following Valsalva-like manoeuvre. Eye 23:1243, 2009
7)Fong DS, Raizman MB:Spontaneous hyphema associated with anterior uveitis. Br J Ophthalmol 77:635-638, 1993
8)高橋俊明:角膜血染.丸尾敏夫・本田孔士・臼井正彦・他(編):眼科診療プラクティス32.166,文光堂,東京,1997

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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