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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科75巻1号

2021年01月発行

文献概要

臨床報告

Nigrospora属糸状菌による遷延性真菌性角膜炎の1例

著者: 小山あゆみ1 大谷史江1 宮﨑大1 井上幸次1 室田博美2 蝶野郁世3 木村圭吾4

所属機関: 1鳥取大学医学部視覚病態学 2鳥取大学医学部附属病院検査部 3島根県立中央病院眼科 4大阪大学医学部附属病院臨床検査部

ページ範囲:P.118 - P.123

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要約 目的:Nigrospora属糸状菌による遷延性真菌性角膜炎の1例報告。

症例:69歳,男性。右眼を稲の葉で受傷し,近医で右角膜潰瘍と診断された。抗菌薬点眼で一時改善するもその後悪化し,別の近医を経て,島根県立中央病院へ紹介となった。入院による抗菌点眼薬治療で上皮欠損は残存していたが,前房炎症は改善したため退院した。しかし,その後に上皮欠損の拡大,前房炎症増悪を認め,鳥取大学医学部附属病院へ受診となった。植物外傷後であること,抗菌点眼薬使用下での再燃であることから真菌感染を考慮し,抗真菌薬を投与したところ,改善を認めた。培養開始後3週間でNigrospora属糸状菌を検出した。

結論:Nigrospora属糸状菌は黒色真菌の1菌種であり,環境に広く分布する。病原性は通常ないとされ,角膜炎の原因となったという報告は筆者らが知る限りでは1例のみである。今回分離された菌は非常に増殖力が弱く,そのため,寛解と増悪を繰り返し,診断が困難であったが,逆に病巣搔爬とホストの免疫力によって治癒したのではないかと考えられた。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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