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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科75巻10号

2021年10月発行

文献概要

特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著

急性網膜壊死治療後のアシクロビル予防量投与中に僚眼に発症した1例

著者: 鈴木映美1 岩西宏樹1 安田慎吾1 細井裕樹2 雑賀司珠也1

所属機関: 1和歌山県立医科大学眼科 2和歌山県立医科大学血液内科

ページ範囲:P.1372 - P.1377

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要約 目的:片眼急性網膜壊死治療後のアシクロビル予防量投与中に僚眼に急性網膜壊死を発症した症例を経験したので報告する。

症例:66歳,女性。2019年7月に急性骨髄性白血病に対して造血幹細胞移植を施行された。アシクロビル200mg/日内服中に左視力低下を主訴に和歌山県立医科大学附属病院眼科を受診した。初診時視力は右(0.8),左(0.09)。右眼は異常なく,左眼に前房内炎症細胞,網膜周辺の白色病変,裂孔原性網膜剝離を認め同日入院した。入院日から抗サイトメガロウイルス薬,翌日からアシクロビルの点滴治療を施行し,入院6日目に網膜剝離に対して手術を行った。前房水と硝子体液から水痘・帯状疱疹ウイルスが検出され,急性網膜壊死と診断した。アシクロビル点滴(5mg/kg×3回/日)2週間,バラシクロビル内服3,000mg/日2週間の全身投与後,病勢が鎮静化したと判断し,アシクロビル200mg/日を継続したが,約1か月後に右眼に白色病変が出現,その後裂孔原性網膜剝離が発症し左眼と同様の治療を行った。バラシクロビル3,000mg/日内服を3週間継続するも副作用のためアメナメビルに変更したが,血球減少のため再度バラシクロビル1,000mg/日に変更したところ症状は改善,以降再発はない。

結論:造血幹細胞移植の患者を対象とした研究で,アシクロビル200mg/日の有用性が報告されているが,免疫不全状態にある患者の急性網膜壊死の発症および僚眼発症に対する予防はアシクロビル200mg/日では不十分の可能性がある。

参考文献

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2)岩橋千春・大黒伸行:感染性ぶどう膜炎.あたらしい眼科35:1625-1630,2018
3)岩橋千春・大黒伸行:【ぶどう膜炎診療の新たな動向】疫学.あたらしい眼科28:463-467,2011
4)Hafidi M, Janin-Manificat H, Denis P et al:Acute retinal necrosis:virological features using quantitative polymerase chain reaction, therapeutic management, and clinical outcomes. Am J Ophthalmol 208:376-386, 2019
5)森地陽子・臼井嘉彦・奥貫陽子・他:発症から3年および21年後に僚眼に再発した急性網膜壊死の1例.あたらしい眼科28:1769-1772,2011
6)岡田アナベルあやめ・田野保雄・樋田哲夫・他:眼科プラクティス16 眼内炎症診療のこれから:163-169,中山書店,2007
7)Tibbetts MD, Shah CP, Young LH et al:Treatment of acute retinal necrosis. Ophthalmology 117:818-824, 2010
8)日本造血細胞移植学会:造血細胞移植ガイドライン,2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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