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文献概要
増刊号 この症例このまま診ていて大丈夫? 病診連携にもとづく疾患別眼科診療ガイド 8 神経眼科
眼窩腫瘤性疾患
著者: 田邉美香1
所属機関: 1九州大学大学院医学研究院眼科学分野
ページ範囲:P.328 - P.332
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《問診で重要なポイント》
・症状の発症時期はいつか?→数日前,数週間前から発症して,増悪しているようなら即日紹介する.
・増悪のスピードは年単位か,月単位か,週単位か,日単位か?→日単位,週単位に増悪している症例は即日紹介する.
・複視があるか?→複視がある場合は画像検査が必須.早急にCT/MRIを手配する.
・痛みがあるか? また,その性状(眼球運動時痛,眼窩深部痛)は?→痛みがある場合,炎症性疾患の可能性が高く,進行が速いことが多い.
・体位による眼球突出の変化→静脈奇形などの血管性病変では,頭を下げると眼球突出が増悪する.
・全身状態や既往歴(悪性腫瘍の治療歴,糖尿病の有無,手術歴など)→悪性腫瘍(特に肺癌,乳癌)の治療歴があれば転移性腫瘍も念頭に置く.糖尿病では,感染性疾患の除外が重要.副鼻腔手術歴があれば,その関連を疑う.
《診察上,注意して診るポイント》
・片側性か両側性か?→両側性であれば炎症性疾患の可能性が高いが,悪性リンパ腫や転移性腫瘍も鑑別に挙がる.
・眼球突出の程度→高度な眼球突出によって,画像上,眼球後方が鋭角になるほど圧迫されているような状態では視機能障害が出るリスクが高く,早急な治療介入が必要である.
・眼瞼腫脹・発赤の範囲→炎症性疾患で発赤・腫脹が強い.眼窩内腫瘍が触れることがあり,触診も重要である.
・結膜・強膜所見→結膜炎や強膜炎を認める場合は炎症性疾患の可能性が高い.
・斜視,眼球運動障害の有無などについて確認を行い,鑑別を進める→斜視,眼球運動障害がある場合は画像検査が必須.早急にCT/MRIを手配する.手配できなければ,早急に紹介する.
病院からクリニックへ逆紹介するとき
・炎症性疾患であれば,一定期間十分な消炎が得られたとき.
・腫瘍性疾患であれば,積極的治療が終了し,経過をフォローするのみとなったとき.
参考文献
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