icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科75巻12号

2021年11月発行

雑誌目次

特集 網膜色素変性のアップデート

企画にあたって

著者: 中澤満

ページ範囲:P.1437 - P.1437

 網膜色素変性(RP)に代表される遺伝性網膜変性疾患は,日常臨床において効果的な治療法がなく,しばしば診療に難渋する。さらにiPS細胞による山中伸弥氏のノーベル賞受賞と,iPS細胞が将来的にRPの新しい治療法として期待されるとの報道が,多くの患者に明るい希望を与えることとなった。それはそれで喜ばしいことではあるが,反面,日常の外来診療の場でもiPS細胞を用いた新規治療法の研究と臨床応用に関して多くの患者からさまざまな質問が発せられ,理想と現実のギャップを説明せざるをえない場面に遭遇することも珍しくはないと推察される。

 歴史的には1988年にSaikiらが現在も汎用されている耐熱性DNAポリメラーゼをPCRに応用して以来,PCRを用いた遺伝子診断がさまざまな分野で一般化され,医学分野では原因遺伝子検索,細胞死機構の解明,遺伝子治療の開発,ゲノム編集の開発など,今日に至るまで爆発的な進歩を遂げてきている。これは眼科だけにとどまらず,多くの分野でも同時進行で研究が進んだ。特に医療分野では,日本でもがんの領域で「がんゲノム医療」が保険診療としてスタートすることとなり,小児科の先天性代謝異常症もそれに続くべく研究が進められている。

【総論】

網膜色素変性:診療のポイント

著者: 堀田喜裕

ページ範囲:P.1438 - P.1444

●RPを代表とするIRD患者の見えない苦しさに寄り添っていくことが求められる。

●診療では白内障手術時期の判断,CMEへの対応,自動車運転に対する指導が重要である。

●遺伝子診断と遺伝子治療について,そのメリットとデメリットをまとめた。

【網膜色素変性:最近の話題】

OCTによる形態と中心視機能との関連

著者: 原藍子

ページ範囲:P.1445 - P.1452

●網膜色素変性(RP)患者のSD-OCTにおいて,定量的な観点においてはIS-EZ幅と網膜外側厚が網膜中心部感度と相関があるとされている。

●RPが進行し,SD-OCTにおけるIS/OSが正常構造から徐々に瘢痕,消失するまでの間に,IS/OSがびまん性に高輝度化する段階がある。

●RPにおける定性的な新重症度Gradeを作成し,定量的パラメータを超える有用性を証明した。

SAG遺伝子変異スペクトラムとしての小口病と網膜色素変性

著者: 西口康二

ページ範囲:P.1453 - P.1459

SAG遺伝子の同じ変異を病因とする小口病と網膜色素変性(RP)はいくつかの特徴的な臨床像を共有する。

●小口病の臨床像も多彩で黄斑変性や網膜変性を呈するケースもある。

●長期の臨床経過のなかで,視機能良好な小口病が高度な視覚障害を呈するRPに進行する場合がある。

日本での遺伝子解析コンソーシアム

著者: 岩田岳

ページ範囲:P.1460 - P.1466

●日本初のオールジャパン体制による遺伝性網膜疾患の患者収集。

●日本初の全遺伝子を対象とした解析。

●日本初の詳細な症例とゲノム情報のデータベース構築。

遺伝子解析でわかったこと

著者: 小栁俊人 ,   秋山雅人 ,   園田康平

ページ範囲:P.1467 - P.1474

●近年,稀な疾患である遺伝性網膜変性疾患においても遺伝子研究の大規模化がみられる。

●日本人の網膜色素変性(RP)の1,204例に対する原因遺伝子の検索により,主要な原因として高頻度にみられる東アジア人に特異的な変異を検出した。

EYSは日本人のRPを特徴づける重要遺伝子である。

●病因変異保有者の原因究明が,本邦のRPの遺伝的原因のさらなる解明のために重要である。

【治療法開発研究の最前線】

網膜色素変性に対する遺伝子治療

著者: 池田康博

ページ範囲:P.1475 - P.1482

●遺伝性網膜変性疾患に対する遺伝子治療の臨床応用が近年加速している。

●遺伝子治療をはじめとするゲノム医療には正確な遺伝子診断が必要とされている。

●網膜色素変性に特化した疾患レジストリが構築され,遺伝子治療をはじめとする治療法開発研究の加速が期待される。

●加齢黄斑変性への遺伝子治療の臨床応用が進んでいる。

人工視覚

著者: 西田健太郎 ,   森本壮 ,   坂口裕和

ページ範囲:P.1484 - P.1490

●人工視覚は,視路に残存している神経細胞を電気刺激することで,疑似光覚を得て視覚を取り戻す。

●特に,網膜を刺激するものは人工網膜と呼ばれ,すでに実用化された。

●現在の人工視覚の分解能は低いが,埋植患者のQOLを上げるためにさまざまな研究がなされている。

網膜色素変性における再生医療

著者: 万代道子

ページ範囲:P.1491 - P.1497

●ES細胞やiPS細胞から究極的な生体材料ともいえる網膜色素上皮(RPE)細胞や網膜組織・細胞が用意できるようになった。

●ES/iPS細胞由来のRPE細胞については複数の臨床研究や治験が海外で行われてきており,安全性の確認の段階から,適応の拡大および有効性を検証する段階へと進んでいる。

●ES/iPS細胞由来の網膜組織を用いた移植による視機能の再建は動物で検証されており,国内での臨床研究も開始された。

網膜色素変性に対する薬物治療の現在と未来

著者: 村上祐介

ページ範囲:P.1498 - P.1504

●網膜色素変性(RP)に共通する病態を標的として,神経保護,抗酸化,代謝修飾,抗炎症などの薬物治療が開発されている。

●酸化や炎症などのRPに伴う微小環境変化は,網膜局所のみならず末梢血を含めて全身性に起こっている。

●薬物治療の有効性はいまだ確立されていないものの,RP患者を対象とした臨床試験が日本を含む世界各国で実施されている。

【特殊な網膜ジストロフィ】

小児期に遭遇する網膜ジストロフィ

著者: 近藤寛之

ページ範囲:P.1505 - P.1510

●小児の網膜ジストロフィは遺伝子異常によって起こり,その原因や臨床像はきわめて多様である。

●OCTや眼底自発蛍光などの画像診断により新しい知見が報告されている。

●海外では原因遺伝子の補充を目的とする遺伝子治療の承認・臨床治験が進んでおり,遺伝子診断の重要性も増すと思われる。

連載 今月の話題

アイフレイル対策活動

著者: 辻川明孝

ページ範囲:P.1430 - P.1435

 日本眼科啓発会議が準備を行ってきたアイフレイル対策活動がついに始まった。アイフレイルとは加齢による目の機能低下を示す新しい概念である。アイフレイル対策活動を通して,目の健康寿命の延伸に取り組んでいきたい。

Clinical Challenge・20

白内障手術後早期の角膜合併症

著者: 横川英明

ページ範囲:P.1427 - P.1429

症例

患者:87歳,女性

主訴:視力低下

既往歴:20年前に脳梗塞

現病歴:10年前に緑内障を指摘された。7年前に右眼の眼圧上昇と虹彩炎を指摘されたが,受診が途絶えていた。4か月前に両眼の点状表層角膜症,虹彩後癒着および白内障を指摘され,眼圧は右24mmHg,左8mmHgであったためステロイド点眼とラタノプロスト点眼で加療したところ,眼圧が落ち着いた。両眼の高度の白内障に対して,8日前に左眼,7日前に右眼の白内障手術を受け,術後より両眼にモキシフロキサシン点眼4回,フラジオマイシン含有0.1%ベタメタゾン点眼4回およびブロムフェナクナトリウム点眼2回を開始された。ところが,術後約1週で見にくさを自覚し,左角膜障害を指摘されて緊急紹介され初診となった。

国際スタンダードを理解しよう! 近視診療の最前線・14

—近視そのものが失明を起こす—病的近視—近視性黄斑症全般—META-PM

著者: 渡辺貴士

ページ範囲:P.1512 - P.1516

◆近視性黄斑症は,近視性網脈絡膜萎縮病変と3つのプラス病変から構成される。

◆META-PM分類のカテゴリーは必ずしも実際の長期経過の重症度を反映しない。

◆脈絡膜厚を計測することで,より客観的な近視性黄斑症の分類が可能になる。

眼科図譜

Paracentral acute middle maculopathy

著者: 吉田花 ,   反保宏信 ,   牧野伸二

ページ範囲:P.1540 - P.1543

緒言

 傍中心窩急性中間層黄斑症(paracentral acute middle maculopathy:PAMM)は,2013年にSarrafら1)が提唱した疾患概念で,傍中心窩に網膜の白濁を呈し,急性の傍中心暗点を自覚症状とする。網膜静脈閉塞症や網膜動脈閉塞症,糖尿病網膜症などの網膜血管疾患によって生じることがある。検眼鏡的に所見に乏しい場合もあるが,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)で,傍中心窩付近の内顆粒層レベルの網膜中間層に限局した高輝度病変がみられることを特徴とする。

 今回筆者らは,PAMMの1例を経験したので報告する。

文庫の窓から

『医心方』

著者: 安部郁子

ページ範囲:P.1549 - P.1554

平安時代から読み継がれた医書

 『医心方』は平安時代,鍼博士であった丹波康頼(912〜995)によって著された書物である。この『医心方』の読み方は,石原明の英文解説書 “The Tao of Sex”(1968)で “Ishinpo” と綴られ,また室町時代以前はハ行は唇を合わせて発音するのが通例であったから,「いしんぽう」となり,半井家では「いしんぽ」と呼ばれていたということが杉立義一の『医心方の伝来』1)に書かれている。

 本貫地の丹波国から都に来て,典薬寮医官となった丹波康頼は中国医書を研究した。長年の研究の成果を70歳をすぎてからまとめ上げたのが『医心方』三十巻だ。引用した底本の数は204(馬継興による),条文数は10,880であるという。医学・本草・養生について,漢文で書かれた『医心方』は永観2年(984)11月28日,花山天皇に奉じられた。引用した中国医籍の条文を見ると,中国においては北宋の大きな改編などで失われている隋唐時代の文章が見られることもあり,大変貴重な書物で,現在ユネスコ世界遺産としての登録を目指していると聞く。

臨床報告

急性水腫後の円錐角膜眼に対してスクレラルレンズを装用した2症例

著者: 岡島行伸 ,   柿栖康二 ,   鈴木崇 ,   糸川貴之 ,   高橋英敏 ,   堀裕一

ページ範囲:P.1520 - P.1526

要約 目的:スクレラルレンズ(ScCL)は,直径が大きいコンタクトレンズ(CL)であり,角膜ではなく強膜で支持され,角膜全体をドームで覆うようにフィッティングをさせる。海外ではハードCL(HCL)不耐性や重症の円錐角膜眼に広く用いられている。今回,急性水腫の既往があるCL不耐症の円錐角膜眼に対してScCLが有用であった2症例を報告する。

症例と所見:症例1は20歳,男性。9か月前に右眼に急性水腫を発症し,治癒後も角膜混濁が残存した。異物感が強くHCLによる視力矯正が困難であり,ScCL(TimeXL,Menicon B.V.)を処方したところ,視力は(0.3)から(1.0)へ向上し,実用視力測定による視力維持率(VMR)も0.94と良好であった。症例2は45歳,男性。8年前に右眼円錐角膜眼に急性水腫を発症し,治癒後も角膜混濁が残存した。装用中のHCLに異物感があり,水泳をしているときには装用が困難であった。同様にScCL(TimeXL)を処方したところ,視力は(0.04)から(0.5)へ向上し,実用視力測定によるVMRも0.95と良好で,HCLと変わらないものであった。2症例とも毎日10時間以上のCL装用が可能となった。

結論:円錐角膜眼における急性水腫後のCL不耐性に対してScCLを装用し,良好な視力と持続装用が可能となった2症例を経験した。急性水腫後の角膜混濁による視力低下に対しては角膜移植が選択されるが,角膜移植を回避する1つの選択肢としてScCLは有用であると思われる。

再発がみられた単純ヘルペスウイルス2型による急性網膜壊死の1例

著者: 清野修平 ,   南場研一 ,   水内一臣 ,   岩田大樹 ,   鈴木佳代 ,   品川真有子 ,   長谷敬太郎 ,   石田晋

ページ範囲:P.1527 - P.1532

要約 目的:急性網膜壊死(ARN)は稀に再発することが知られている。今回二度の再発がみられた単純ヘルペスウイルス(HSV)によるARNの1例を経験したので報告する。

症例と所見:12歳,女性。右眼に前房炎症,硝子体混濁,全周の網膜血管の白鞘化,白色滲出斑の散在がみられた。点眼治療のみで網膜瘢痕病巣を残して治癒した。22歳時に再発した。右眼に強い前房炎症,硝子体混濁がみられ,眼底は透見困難であり,前房水のPCR検査にてHSVが検出され,HSVによるARNが疑われた。アシクロビル(ACV)点滴とプレドニゾロン(PSL)内服にて硝子体混濁が薄くなるとともに網膜動脈白鞘化を伴う網膜白色病変がみられ,その後,網膜瘢痕病巣を残して治癒した。31歳時に再発した。右眼に前房炎症,硝子体混濁,網膜血管白鞘化,耳側網膜に白色病変がみられた。前房水のPCR検査にてHSV-2が検出され,HSV-2によるARNと診断。ACV持続静注とPSL内服を開始し,網膜白色病変は徐々に消退したが,硝子体混濁の増悪がみられたため硝子体手術を施行した。術後2年が経過し,網膜剝離に至ることなく経過している。

結論:HSVによるARNは長期間の潜伏期間を経て再発することがあり,軽快後も慎重に経過観察する必要がある。

Nd:YAGレーザー虹彩切開術:上方施行例と下方施行例の比較

著者: 小林博

ページ範囲:P.1533 - P.1539

要約 目的:Nd:YAGレーザー虹彩切開において,上方施行例および下方施行例で,Nd:YAGレーザーエネルギー,虹彩出血および異常光視症の頻度を比較した。

方法:対象は,原発閉塞隅角緑内障,原発閉塞隅角症および原発閉塞隅角症の疑いの患者で,Nd:YAGレーザー虹彩切開術を予定した52名88眼(年齢72.4±8.1歳,女性36名,男性16名)である。上方施行例は26名(女性16名,男性10名),下方施行例は26名(女性20名,男性6名)である。両眼施行例では先に施行した眼を解析に用いた。2017年6月までは,上方(11〜1時)で虹彩切開術を施行し,2017年7月からは下方(5〜7時)で施行した。

結果:Nd:YAGレーザーの発数は,上方群では5.3±2.2発(34.5±18.2mJ),下方群では4.0±1.6発(26.0±11.7mJ)であり(p=0.0260),虹彩出血は,上方群で6例(23%)で,下方群で1例(4%)でみられた(p=0.0422)。1年間の眼圧の変化は,上方群では−2.4±3.7mmHg,下方群では−1.6±4.0mmHgであり,眼圧の変化は両眼ともほぼ同様な推移がみられた(p=0.4)。角膜内皮細胞密度の減少率は上方群では−1.1±0.2%,下方群で−1.2±0.3%であり,有意差はなかった(p=0.8)。虹彩切開術に特異的な線状光視症の頻度は両群間に有意差はなかった(p=0.2)。

結論:レーザー虹彩切開術において,下方施行例は,上方施行例に比較して,Nd:YAGレーザーの発数および虹彩出血の頻度は有意に低かった。眼圧の変化,角膜内皮細胞密度の減少および異常光視症の頻度は両群間に差異はみられなかった。

臨床ノート

当院で経験したmacular telangiectasiaの2例

著者: 柊山剰 ,   上岡弥生 ,   森高ルミ

ページ範囲:P.1545 - P.1548

緒言

 柊山医院(当院)で経験した黄斑部毛細血管拡張症(macular telangiectasia:MacTel)の2症例の眼底および画像所見を紹介する。この疾患は日常診療で,それほど多くみられる疾患ではないので注意が必要である。

Book Review

神経眼科学を学ぶ人のために 第3版

著者: 村上晶

ページ範囲:P.1517 - P.1517

 私自身,神経眼科学については,系統立った教育を受けないまま,眼科医として仕事をしている。したがって,この領域は正直いってあまり得意ではない。苦手といってもよいかもしれない。そういう私が頼りにしている一冊が,三村治先生の執筆による『神経眼科学を学ぶ人のために』である。おそらく,神経眼科を基本から学ぶ入門書としても,どう診断するか迷う症例の答えを探すときにも多くの眼科医が手に取っているのではと思う。

 今回,改訂第3版が発刊され,これまで以上に見やすいイラストと懇切丁寧に解説された臨床画像が満載されており,さらに頼もしい一冊になっている。専門外の者にとっては,神経眼科疾患を前にして,どう診察を始めていいか迷うことが少なくない。そういう気持ちを察するかのように,診断のコツ,そして優先すべき検査を明解に記述くださっているのがありがたい。余裕のないときは,ボールドで印刷されているところに注意を払って読んでいくことで大切なことを逃さずに要点を整理できる構成になっている。治療についても,最初の一手からその後の経過の見方まで,豊富な経験と最新の知見をもとにポイントをしぼった形で記載されている。エビデンスの蓄積が待たれるような新しい知見や,専門家の視線で注目している事柄の記載がコラム「Close Up」として各所にちりばめられているのでじっくり読み込む楽しみもある。

海外留学 不安とFUN・第70回

アデレード留学記・1

著者: 岡島行伸

ページ範囲:P.1518 - P.1519

世界で最も住みやすい都市

 2018年10月〜2020年3月に,オーストラリアのアデレードにあるフリンダース大学とInnovative eye careクリニックに留学してきました。オーストラリアによい印象をもたれている先生方は多いと思います。国内最大級の都市シドニー,リゾート地のグレートバリアリーフなどが有名です。そのなかでアデレードという都市を知っている先生は少ないのではないでしょうか。

 アデレードは人口110万人を抱えるオーストラリア第5の都市で,オーストラリア南部に位置し南オーストラリア州の州都になります。シドニーからはおよそ1,200km,東京から鹿児島ぐらいの距離です。街並みの美しさ,治安の良さ,住みやすさから毎年「世界で最も住みやすい都市」の1つに挙げられ,2016年の「世界で最も住みやすい都市ランキング」で,堂々の5位を獲得しています。

--------------------

目次

ページ範囲:P.1422 - P.1423

欧文目次

ページ範囲:P.1424 - P.1424

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.1555 - P.1557

アンケート用紙

ページ範囲:P.1562 - P.1562

次号予告

ページ範囲:P.1563 - P.1563

あとがき

著者: 堀裕一

ページ範囲:P.1564 - P.1564

 臨床眼科11月号をお届けいたします。さて,本号の特集は「網膜色素変性のアップデート」です。堀田喜裕先生の総論から始まり,原 藍子先生のOCTによる形態と視機能の関連,西口康二先生の小口病と網膜色素変性の関係,岩田 岳先生および小栁俊人先生のわが国における遺伝子解析研究の解説,池田康博先生の遺伝子治療,西田健太郎先生の人工視覚,万代道子先生のES/iPS細胞による再生医療,村上祐介先生の薬物治療,近藤寛之先生の小児の網膜ジストロフィの解説と,目次を見るだけでワクワクするラインナップとなっています。わが国では,遺伝性網膜疾患におけるオールジャパンの症例情報データベースがあり,様々な研究が行われています。一流の専門家の先生方が,素晴らしいチームワークで世界に発信する素晴らしい研究を行っておられます。皆様,この機会に網膜色素変性の知識のアップデートをなさってください。

 「今月の話題」は辻川明孝先生による「アイフレイル対策活動」です。もともと「フレイル」は日本老年学会が提唱した概念で,「Frailty(虚弱)」の日本語訳です。健康な状態と要介護状態の中間に位置する状態のことで,最近あちこちで見聞きするようになりました。「アイフレイル」というのは日本眼科啓発会議が作成した新しい概念で,辻川先生はこの「アイフレイル」誕生前から関わってこられました。今後は,一人でも多くの眼科関係者にこのアイフレイルについて知っていただき,国民の目の健康寿命を延ばすために,「アイフレイル対策活動」を行っていきたいと思います。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?