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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科75巻12号

2021年11月発行

文献概要

文庫の窓から

『医心方』

著者: 安部郁子1

所属機関: 1研医会

ページ範囲:P.1549 - P.1554

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平安時代から読み継がれた医書

 『医心方』は平安時代,鍼博士であった丹波康頼(912〜995)によって著された書物である。この『医心方』の読み方は,石原明の英文解説書 “The Tao of Sex”(1968)で “Ishinpo” と綴られ,また室町時代以前はハ行は唇を合わせて発音するのが通例であったから,「いしんぽう」となり,半井家では「いしんぽ」と呼ばれていたということが杉立義一の『医心方の伝来』1)に書かれている。

 本貫地の丹波国から都に来て,典薬寮医官となった丹波康頼は中国医書を研究した。長年の研究の成果を70歳をすぎてからまとめ上げたのが『医心方』三十巻だ。引用した底本の数は204(馬継興による),条文数は10,880であるという。医学・本草・養生について,漢文で書かれた『医心方』は永観2年(984)11月28日,花山天皇に奉じられた。引用した中国医籍の条文を見ると,中国においては北宋の大きな改編などで失われている隋唐時代の文章が見られることもあり,大変貴重な書物で,現在ユネスコ世界遺産としての登録を目指していると聞く。

参考文献

1)杉立義一:医心方の伝来.思文閣出版,京都,平成3年(1991)
2)森潤三郎:多紀氏の事蹟.日本医史学会 昭和8年(1933)https://www.dl.ndl.go.jp/api/iiif/1208864/manifest.json
3)矢数道明:江戸医学における「医心方」の影写と校刻事業の経緯.日本医史学雑誌 第31巻 第3号 通巻 第1439号 昭和60年(1985)http://jsmh.umin.jp/journal/31-3/303-316.pdf
4)財団法人日本古医学資料センター(編):安政版『医心方』和綴本三十巻 解説書一巻 複製本 講談社,東京,昭和48年(1973)
5)熊本大学薬学部データベース「エビスグサ」http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003467.php
6)知られざる漢方用薬—神麹−.生物工学 96:476,2018 https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9608/9608_biomedia_5.pdf
7)e-國寶 『医心方』半井家本 巻五顔面部 https://emuseum.nich.go.jp/detail?content_base_id=100173&content_part_id=005&langId=ja&webView=

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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