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臨床報告
インターフェロン-β結膜下注射が奏効した結膜悪性黒色腫の1例
著者: 田代葵子1 上笹貫太郎1 堀之内道子2 谷本昭英2 坂本泰二1
所属機関: 1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻感覚器病学講座眼科学分野 2鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻腫瘍学講座病理学分野
ページ範囲:P.1650 - P.1656
文献購入ページに移動症例:患者は91歳,女性。20XX年8月に増大と出血を伴う右下眼瞼結膜の隆起性腫瘤を自覚し,加療を目的として鹿児島大学病院眼科を紹介された。高血圧症,糖尿病,ネフローゼ症候群の既往があった。
所見:初診時,右下眼瞼結膜に15mm大の出血を伴う隆起性腫瘤を認めた。拡大切除術を提案したが,高齢のため外科的治療を希望しなかった。下眼瞼結膜腫瘤を部分切除し,悪性黒色腫と組織診断した。全身検査では遠隔転移は検出されなかった。出血傾向の改善のため放射線治療(線量28Gy/14Fr)を行ったのち,IFN-β結膜下注射(300万単位/回)の継続で経過観察した。1回目の注射後から出血傾向は改善した。さらに週1回で注射を継続したところ,投与開始後3回目より隆起性病変は縮小を認め,8回目でほぼ消失した。副作用として視力低下を認めたため,投与間隔を延ばし,1回量を半減して投与を継続した。その後も病変の増悪や遠隔転移は認めなかったが,投与開始から8か月後に既往のネフローゼ症候群の悪化を認めたため治療を中止した。
結論:IFN-β結膜下注射は結膜悪性黒色腫の治療に有効であった。しかし,眼局所および全身に副作用を及ぼす可能性があり,投与量および投与間隔に注意が必要である。
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